BABYMETALとさくら学院に出会った

いろんなテーマで、BABYMETALとさくら学院への愛を語ります。

いくつかの随想① ~「Catch Me If You Can」について~

インターミッションです。時々つれづれに、少し細かい枝葉のような内容を書く事も試みてみたいと思っています。

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前のエントリーで、メトロックのDVDが自分のBABYMETAL体験におけるターニングポイントになったお話をしました。初めてメトロックの映像を観た時、遂に自分の感受性がBABYMETALに追いついたような感覚を覚え、一曲目の「メギツネ」から興奮を抑えられずにいましたが、その中でも「開眼した」というか、音楽の新しい価値観に明確に自分が気付いた瞬間が3曲目の「Catch Me If You Can」でした。今回はそれについて少し書きたいと思います。レビュー(批評)というにはおこがましいので、感想くらいのつもりで気軽に書きます(楽曲のレビューという点では、書籍化もされている小中千昭さんの「BABYMETAL試論」という素晴らしいブログがあり、本文章も多分に参考にさせて頂いています。)。

 

 

「Catch Me If You Can」は多くの場合神バンドによるソロの導入で始まりますが、このメトロック2015での「神ソロ」も他の公演に劣らずとてもステキです。大村さんが瀧廉太郎の「花」(会場は隅田川が近くに流れる豊洲)を弾いたり、藤岡さんと2人でBOHさんにちょっかいを出したり。短いインプロビゼーションで会場を興奮の渦に巻き込んでいくのがよく分かります。

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神バンドのソロが終わると間髪入れず3人が掛け声をかけながら舞台に登場します。拳を振り上げ、しかしこれでもかと言わんばかりのキュートな笑顔でクラウドを煽る3人。始まるぞ感が最高潮に達した瞬間に「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!!」というカウントで曲がスタートします。ライブの現場に最高に映えるイントロです。

 

曲の序盤はSlipknotを思わせるヘヴィな演奏とデスヴォイス、そこにあくまでも澄んだ「まあだだよ!」というウィスパーの対比が鮮やか。どうしたって印象に残ります。そして更に印象的なのはダンスで、鬼から走って逃げるゼスチャーなのですが、アクションはとても躍動的なのに、静止画にしてもとてもピクトリカルです。ウェンブリーなどで用いられた影絵の演出シーンを見るとその見事さがよく分かります。

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 「あっちかな?こっちかな?」から始まるYUIMETALとMOAMETALのパートは、ダンスでもあり、タイム感を保ったダイアローグでもあり、そして何より表情も見事な “お芝居” です。このお芝居の部分が僕にとっては目からウロコの感覚なのでした。わずか数分の時間の中に、これだけ激しく上質な演奏と躍動的なダンスと豊かな表現のお芝居が同居しているというのは、少なくとも僕が今までに体験したことがない音楽でした。

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お芝居ののちのSU-METALのヴォーカルパートでは一転してメロディと端正に揃った3人のダンス。Aメロとは異なる「走り」の動きが入り(SU-METALはしれっと歌いながらこの動きをするのですが、簡単ではないですよね)、そしてそのあとのブレイク前はこの曲の中でも動きの激しい部分です。「ヘッドバンギャー!!」ほどではないにしろジャンプは充分な高さですし、ブレイクダンスっぽい動きやゾンビを模した動きも見られます。ホラーな空気を纏ったSU-METALの囁くような「鬼さんこちら」と、手招き。YUI&MOAがギターの音に合わせて宙を掻きむしるような動きをするのも細かい表現です。そして「みいつけた!」の号令でモッシュピットが爆発しています。

 

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再びサビのメロディが奏でられ、YUIMETALとMOAMETALが “捕まって” 、曲は終わりを迎えるのですが、ここからラストの30秒間に詰め込まれた情報量もハンパじゃないです。3人はまずAメロの走りのダンスをステージ中央で、それから揃って上手に移動し手を額にかざして何かを探すゼスチャー。さらに下手に移動して同じ動き。しかも3人の動きは正面から観ると見事にグラデーションしています。再びステージ中央に戻り、神バンドが完璧なアウトロを決めるのにシンクロして、とても美しい最後のポーズを決めます。3人はこの瞬間の指先、表情までを見事に演じきっていて、その表現への集中力は曲の冒頭から一瞬たりとも弛緩しません。

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この最後のMOAMETALの表情は本当に見事ですよね。

 

 

 こうやって感想を綴ってみると、結局大半はダンスのことを書いているのに気が付きます。ただ僕にとって大事だったのは、ダンスやお芝居の要素が存分に詰め込まれながらも、曲全体はめちゃくちゃエキサイティングなロックとしてまとまっているという事でした。「相入れるはずのない複数の要素があり得ないくらい高次元でひとつになっている」、というBABYMETALの魅力を分かりやすく伝えてくれたのがこのメトロック2015での 「Catch Me If You Can」だったのかな、と思います。