BABYMETALとさくら学院に出会った

いろんなテーマで、BABYMETALとさくら学院への愛を語ります。

さくら学院のこと。② ~『さくら学院祭☆2018』について~

 2018年11月25日(日曜日)、東京国際フォーラム ホールCで『さくら学院祭☆2018』がおこなわれました。今年は例年とは異なって1回限りの公演となりチケット争奪の競争率は高かったのですが、運よく当選することができ初めての学院祭参加となりました。3階席、ステージまで距離はありますが全体を俯瞰しやすい場所です。また、27日(火曜日)には映画館でのライブビューイングがあり、そちらも鑑賞させて頂きました。

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セットリスト 

 

1.目指せ!スーパーレディー -2018年度-

2. ベリシュビッッ

~寸劇~

3. Fairy tale

4. ご機嫌!Mr.トロピカロリー

5.WONDERFUL JOURNEY

6. C'est la vie / 美術部 trico dolls(新谷ゆづみ、森萌々穂、野崎結愛)

7. メロディック・ソルフェージュ

~サクラデミー女優賞は誰だ?!~

8. オトメゴコロ。

9. ハートの地球

10.My Road

<アンコール>

11. あきんど☆魂~ピース de Check! / 購買部(吉田爽葉香、有友緒心)

12.夢に向かって

 

今年も学院祭は「目指せ!スーパーレディ」の最新版からスタートしました。続けてイントロがアレンジされた「ベリシュビッッ」、そして短い転換に続きそのまま寸劇がスタートします。個人的には学院祭のハイライトはこの寸劇でした。『顔笑れ!!FRESH!マンデー』の放送で森ハヤシ先生も匂わせていたし、今回の学院祭ではきっと演技に関する新たなチャレンジがあるのだと思っていました。父兄さん達はもちろん、森先生も認めるように今年度の中3は揃って "演技派" です。恐らく、2018年度だからこそ可能な「演劇」をパフォーマンスの中に 組み込んでくるに違いないと期待していました。そして、実際に国際フォーラムの舞台上で繰り広げられた寸劇は、自分の期待を上回る素晴らしい内容のものでした。

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寸劇の骨格は「タイムリープ」という現象が起こり、同じ内容が2度繰り返され、2度目は少しずつ変化していくという事。そこに2018年度の生徒会人事を巡る生徒たちの心の機微が絡み、複雑な構成と深いテーマが結びついた脚本でした。演劇に関しては素人ながら、ライブパフォーマンスのさなかに短い時間の中でこの内容を演じるのは簡単ではない、という事は容易に想像ができます。特に時間が戻ったあとの後半部分は、原則として前半に見せたお芝居を狂いなく繰り返す必要があり、変化やアドリブが許されるのはタイムリープ主体者である日髙さん・新谷さんのアクションを受けた部分のみ。一度限りの公演でプレッシャーは計り知れなかったでしょうが、生徒の皆さんはとても頑張っていて、荒唐無稽な題材も自然に演じられていました。

 

「主役」であった中等部3年の3人は、難しい脚本をしっかりと成立させるに留まらず、感情を込めた見事な演技で劇を生きたものにしていました。新谷さんの迫真の涙。麻生さんの独唱。日髙さんの存在感。そして難しい構成、重い場面を強く印象に残しつつも、演者の皆さんが楽しそうにお芝居をしていることが全体として爽やかな空気を産み出していました。素直に何度でも観たいと思える素晴らしい劇でした。寸劇のラストから繋がる形で新曲「Fairy tale」が披露され、その後は楽曲のパフォーマンス、新しい部活動=美術部のお披露目、そして6名の選抜メンバーによるさくらデミー女優賞も開催。初めて現地で観る事ができたさくら学院祭は、生徒の皆さんの個性を存分に楽しめる幸せな2時間半の公演でした。今回のエントリではセットリスト順のパフォーマンスではなく、生徒の皆さん一人一人の印象に残った点を思い出しながら学院祭の「感想文」を書きたいと思います。

 

麻生真彩さん(中等部3年/トーク委員長)

学院祭でパフォーマンスにおいて最も活躍したといっても良いのではないでしょうか。僕は今年度のさくら学院のパフォーマンスを9月にライブハウスでのスタンディングで初めて観ました。その時から真彩さんの歌とダンスは強く印象に残っており、それはホールを舞台にしたライブパフォーマンスでも同じでした。真彩さんのパワフルで情感溢れる歌とダンスは昨年度の中3とはまた異なる個性であり、2018年度さくら学院のエネルギッシュなパフォーマンスを引っ張る存在になっているように思えます。そして学院祭を通して真彩さん最大の見せ場は、寸劇の劇中、国際フォーラム ホールCのステージで、独りで「secret base ~君がくれたもの~」(ZONE)を唄ったことでしょう。直前の新谷さんとのやり取りで既にバカになっていた涙腺はこの歌唱シーンに至って更に崩壊し、現地でもライブビューイングでも涙と鼻水を垂れ流しながら、独り唄う真彩さんを食い入るように見つめていました。

 

もう一つとても印象に残ったのは寸劇の冒頭、彼女が始まりの一言を言う場面です。

「・・・テーマソングになればいいなって。」という主語のない唐突な台詞。現地で初めて観た時には音響のミスでアタマ部分が切れたのではないかと思ってしまいました(もしかして森先生、そこまで計算していたでしょうか?)。劇が進み、種明かしの後でその "意味" は分かるのですが、そうするとライブビューイングでは見方が全く変わってきます。最初に違和感を持たせるというインパクト、そして2回目以降には物語全体のキーポイントになるというこの台詞は、実は寸劇の中で最も重要な言葉なのかも知れません。僕はLVでの2度目の観覧の時には、この冒頭場面の真彩さんに集中して観ていました。「ベリシュビッッ」が終わりメンバーが一旦舞台からはけた後、下手の舞台袖から足早に現れる真彩さんと藤平さん。そして舞台中央でその足取りが緩やかになり、ひと呼吸置いて冒頭の台詞です。この言葉が独立したものではなく、本来その「前」にあるはずの場面から繋がっていることを意識しているような真彩さんの豊かな表現力がとても心に残っています。

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新谷ゆづみさん(中等部3年/生徒会長)

  自らが前面に立つよりも、メンバーを足もとから支えるという形で自分らしい生徒会長像を築きつつある新谷さん。寸劇では、兼ねてから演技に定評のあった彼女の真価が発揮されました。マルチな才能を持つ真彩さんと自分自身を比較し、自信を失って「真彩みたいにはできないよ!!」と叫ぶシーンで、その瞳からは大粒の涙が流れます。振り返り映像を観ながら森先生が「すごいなあ…」と呟くのもわかる迫真の演技です。そしてこの瞬間的なインパクトだけではなく全体を通して間違いなく新谷さんは寸劇の中心にいました。個人的な話ですが、生徒の皆さんがトチる前半部分、最初はこれがきっちりとしたお芝居なのかアドリブ中心のコントなのか判断がつかなかったのです。それほどみんな "上手に失敗" していました。でもモニターに映る新谷さんの表情を見て「ああ、これは初めからちゃんとお芝居してるんだ」と確信するわけです。そしてタイムリープという要素が登場した時に色々な事がストンと腑に落ちる。森先生の素晴らしい脚本を、新谷さんの確かな演技が際立たせていました。役になりきって表情や全身を使いお芝居する彼女ですが、囁くような場面でも叫ぶ場面でも言葉の内容がはっきりと聞こえる事が素晴らしいと思います。ほとんど感情を爆発させるような寸劇のピークの場面でも、台詞ははっきりと観ている側に伝わってきました。昨年からずっと思っていることですが、本当に長尺の本格的な演技を観てみたいです。

 

楽曲のパフォーマンスでは、生徒会長としての立ち位置と同じく、自らぐいぐいというよりも周りを引き立たせる役どころが多かったように感じます。しかし新谷さんのダンスはアクションが大きく、関節を曲げる角度がすごくキレイなので(角度にこだわる彼女らしいでしょうか)、もちろん遠目からでもはっきりと分かる存在感を発揮していました。そしてパフォーマンスでの最大の見所は、やはり自身初となる部活動、美術部 trico dolls だったのではないでしょうか。ボブヘアにベレー帽、衣装もばっちりとハマり、マリオネット風のダンスもひときわ美しく映えていました。昨年の学院祭ドキュメンタリーでは「とにかくさくら学院が好きなんですよ」とストレートにさくら学院愛を語っていた新谷さん。生徒会長という立場で逆に難しいことがたくさんあったと思うのですが、 "爆発" という自らが発案した2018年度の個性は、この学院祭で色鮮やかに発揮されていたのではないかと思います。

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日髙麻鈴さん(中等部3年/はみだせ!委員長)

中等部3年生になり、その特異なキャラクターは更にはっきりと確立されてきた感があります。寸劇での超能力者ぶりは、遂に時間を止めるだけでなく戻す事が出来るようになってしまいました。麻鈴さんが持つ不思議な力は、さくら学院の舞台上では物語が別の局面へと移るスイッチであり、観る者に安心感を与える落としどころのようなものでもあります。麻鈴さんが卒業した後に脚本を書く事への心配を隠さなかった森先生の気持ちも分かる気がします。そして麻鈴さんはキャラクターがトリッキーなだけでなく、表現者としての実力が12人の中で最も堅固である事がこの学院祭ではっきりと分かりました。寸劇の飛び道具的な役どころも、決してお芝居全体が "突拍子ない" ものにならなかったのは、彼女の演技が本当に観客を惹き込む力を持っていたからだと思います。今回たっぷりと麻鈴さんのお芝居を観て、台詞の間の取り方が凄く上手だなと思いました。後半部分、麻鈴さんは(新谷さんと共に)既に一度展開されたストーリーに強引に「割り込む」形での狂言回しのような役割を担うのですが、流れを滞らせずしかも雑にならない立ち回りを見事に演じていました。

 

そして麻鈴さんは間違いなく真彩さんと共に2018年度のパフォーマンスの中心を担っています。ダンスでは、決して大きくはない身体ながらも力強さという意味ではメンバーの中でも随一だし、アップで観れば表情や指先の表現は驚くほど繊細で、まさにアーティスト。歌も安定感抜群で、ソロパートでは真彩さんの情感とは異なる "世界" を映し出します。はみだせ!委員長という立場で思い切りはみ出した個性を発揮している麻鈴さんが、実はパフォーマンス面ではその堅固なスキルで足下を支えているという事は実際にライブを観るとよく分かります。そしてそれはそのまま、今年度のさくら学院のグループとしての底力なのだとも思うのです。

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有友緒心さん(中等部2年)

ぱっつん娘からすっかりキレイなお姉さんになった感があります。ありともさんは公開授業などで近くに見る機会も多く、本当にお美しくなられているなあと思っていたのですが、昨年の学院祭の映像を観ていても、一年で雰囲気が随分と変わった気がします。きりっとした一筆書きのような美しさのありともさんです。とはいえ、サクラデミー賞のコーナーでは「なんで(オーディションで)私が選ばれたんだろう」と、さばさばしたキャラクターは相変わらず。楽曲パフォーマンスではその長い手足をしなやかに使い、全体に華やかな表現を加えているように思いました。もちろん、最大の見せ場は「メロディック・ソルフェージュ」で白鳥の湖のメロディに合わせてバレエを踊るシーン。9月のスタンディングに続き観る事ができたのは2度目だったのですが、やはりため息が出るほど美しいです。

 

そして、パフォーマンスでも寸劇でも、ありともさんはチームに落ち着きを与えるような存在になっていました。特に印象的だったのは、寸劇でのちに森先生が大反省したシーンでしょう。タイムリープ後の後半。真彩さんが「連続テレビ小説 みかん」のタイトルコールをしたあと、本来ならば「そうするとやっぱり主人公は…」という森先生の振りに続いてありともさんがしゃしゃり出てくるのが正しいのですが、後半の森先生はここで「そうするとやっぱり新谷が…」と新谷さんの名前を先に出してしまうんですよね。そうすると、その後のゆづみんつぐみんに繋がらない危険性も出てくるわけですが、ありともさんは新谷さんの名前を出されても落ち着いてしっかりと "しゃしゃり出て" 、お芝居を繋いでいました。彼女の舞台度胸はこれからのRoad To…、そして最高学年になってからは更にチームを支える力になるだろうし、勿論パフォーマンス面でももっと中心的な存在になっていくのだろうなという予感がした学院祭でした。

 

藤平華乃さん(中等部2年/パフォーマンス委員長)

何も意識していなくても、気付くと藤平さんを見ている。初めてさくら学院のパフォーマンスを観た時からそう感じていたし、この学院祭でも改めて感じました。やはりダンスでの藤平さんの存在感は際立っています。彼女の体幹の強さは素人目にもはっきりと分かるものですが、そのアスリート的な能力を礎にしてダンスの表現力を磨き上げているのが藤平さんの凄いところだと思います。首を振ったり腕を振ったりするアクションは12人の中でも一番大きいのですが、下半身が全くブレないのでバタついた印象は皆無です。そして難しい体勢や激しいアクションの合間も飛び切りの笑顔は一瞬たりとも崩れず、フロアへのアイコンタクトの回数も多い。映像でも充分に伝わりますが、やはりライブの現場で彼女のパフォーマンスを観るとその凄さはよく分かるなあ、と思いました。この意味においては岡崎百々子さんのパフォーマンスもそうでしたね。

 

今年度の藤平さんは、パフォーマンス委員長として大きな役割を担っていると思われます。それは『顔笑れ!!FRESH!マンデー』の番組内企画に取り上げられた事でも分かるし、学院祭でのさくら学院全体としてのパフォーマンスを観て更に確信が強まりました。ソロの担当などで大きく目立つ場面こそ少なかったものの、転入生たちのダンスの上達や、全員が難易度の高いダンスをしっかりとこなしながらも表情豊かにのびのびと踊っている姿は、彼女がパフォーマンス委員長としてチームにもたらしている影響の大きさを示していたのではないでしょうか。

 

森萌々穂さん(中等部2年)

今回の学院祭のもう一人の主役。新たに創設された美術部の部長であり、生みの親でもあります。ビジュアル的にも洒脱でコンセプトもしっかりしている美術部 trico dollsはまさにもえほさんの為に作られたようなユニットだと思っていたら、ご本人が企画をプレゼンして実現したという素晴らしいストーリー。以前から夢に描いていた、自らが考えたユニットを学院祭の舞台で披露することはもちろん最高に嬉しいには違いありませんが、それ以上にとてつもない緊張感だったのではないでしょうか。いつも飄々としている彼女が、学院祭翌日の『顔笑れ!!FRESH!マンデー』の放送内で「萌々穂、だいじょうぶでしたか?」と尋ねるほど内心では追い込まれていた事を明らかにしていました。ただ、当日のパフォーマンスではそんなことは全く感じさせず、揺るぐことない確実なパフォーマンス力と、いつもの人の惹き付ける笑顔で、本当にいつものもえほさんでした。常に "自分" で変わらない。それは彼女の大きな武器であると思います。もえほさんも含め中等部2年生たちのパフォーマンスにおける安定感は、中3の3人にとって本当に心強いものに違いありません。

 

trico dollsのパフォーマンスは導入部分から凝っていました。暗転後、まずはタキシードで口髭をたくわえトランクを持った麻鈴さん(本人曰く親戚のサム伯父さん)が現れ、トランクの口を開けて指を鳴らすと、モニターにティザー映像が流れます。アトリエにいる3人の少女のシルエット。繰り広げられるドタバタ。BGMは「C'est la vie」のメロディを基にしたものだったような気がします。曲調はちょっと不思議で、バロックポップをダンスミュージック風にアレンジしたような感じ?クリエイターはロヂカを手掛けたEHAMICさんとのことですが、ファンタスティックであたたかみのある曲調がとても印象に残っています。えんじ色のベレー帽に白い生成りのブラウス、サスペンダーにダボっとしたズボンとアーガイルの靴下という衣装が、もえほさんのノーブルな可愛さを親しみやすくアピールしていて、いきいきと踊る彼女はまるで本当に絵画の登場人物のようでした。舞台上でのパフォーマンスだけでなく、さくら学院を客観的な視点でも見る事が出来ているように思えるもえほさんが、この新しい部活動をどう展開させていくのか、これからも興味が尽きません。 

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吉田爽葉香さん(中等部2年/教育委員長) 

藤平さんと同じく2015年転入組である爽葉香さん。今年度、中等部2年で教育委員長に任命されました。年度のスタートの時には、何か特別なことをするわけではなく、まずは自分がさくら学院生としてしっかりと成長する事で結果的に下級生たちへ色々なものを伝えていきたいと語っていました。この学院祭までの間、転入生や下級生たちは爽葉香さんの背中を見て何を感じていたのでしょうか。彼女のパフォーマンスはとにかく「全力」というイメージが強いです。初めてライブを観た時には、あまりにも全力で腕を振っているので肩が外れないかと要らぬ心配をしたほど(笑)。そのダイナミックな動きを可能しているのは彼女の身体の柔らかさですが、更にそこに指先や表情の繊細な表現も加わり、より遠くまで届くパフォーマンスになった感があります。グループの中でも長身であることからフォーメーションの後方部隊に配置されることが多いようでしたが、しっかりと存在感を放っていました。

 

「ご機嫌!Mr.トロピカロリー」が久しぶりにステージで披露されたことは学院祭の大きなトピックスでしたが、その中でも爽葉香さんがメガネをはずして華麗なウォーキングを見せた場面は会場が驚きと歓声に包まれました。僕は「トロピカロリー」が始まった瞬間から、ランウェイの場面は爽葉香さんだろうと確信していたのですが、まさかメガネをはずすアクションは予想しておらず、思わずおぉっと声を出してしまいました。森先生曰くご本人は会場のリアクションに不満だったらしいですが…(笑)。爽葉香さんは寸劇でも見せ場があり、また、学院祭以外のライブでも多くの場合は有友さんと共に購買部での出番があります。ライブの中で目立つ場面は多いように思えます。その一つ一つに全力で臨むことを通じて、彼女が教育委員長として伝えたい事が下級生たちに伝わり、成長に繋がっていく2018年度の過程と完結をしっかり見届けたいと思います。

 

白鳥沙南さん(中等部1年)

 転入式でのビジュアルインパクトがまず凄かった沙南さん。この半年間で、「FRESH」や公開授業などを通じて彼女のキャラクターも分かってきました。学院祭で印象的だったのは、サクラデミー女優賞で先陣を切って挙手をした場面でした。沙南さんには「まずやってみよう」という思い切りの良さがあって、それはハートの強さというよりもとにかく色んなことを経験したいという好奇心に近いものなのではないかと思います。そして、やってみた後にしっかりと反省できるのが彼女の良いところ。さくら学院転入以来、チャレンジと失敗を繰り返してここまで成長してきた事が学院祭のパフォーマンスからも感じられました。ダンス経験がある彼女もさくら学院のダンスは特殊で難しい、特に表情や表現の部分で苦労してきたことを学院日誌などで語っていましたが、学院祭の1曲目「目指せ!スーパーレディー -2018年度-」、個人パートで森先生の言葉をスルーする表情はとても良かったと思います。野中さんというパートナーを得て、Road To…をどのような成長を見せて駆け抜けるのか、目が離せません。

  

野中ここなさん(中等部1年)

衝撃という点では2018年度の学院祭はこの人が全部持って行った感さえあります。サクラデミー賞で「なすお」というクレイジーなキャラクターを創造し、会場はもちろん舞台上をも混乱に陥れた野中ここなさんです。学院祭の本番前にさくら学院職員室から「ついに転入生も殻を破った」というツイートがあったのを覚えているのですが、今思えばあれは野中さんの事だったのかも知れません。僕が思ったのは野中さんはとにかく想像力があるという事と、その想像力から産み出されたキャラクターになりきれる、という事です。デミー賞に関しても突飛なことをやってやろうという意図よりは、なすおというキャラクターが勝手に動き出したという感じでしたもんね。野中さんは転入式の時から、初めて踊る曲なのに表情がとても豊かだなと感じていました。楽曲に独自の解釈を加えたり、楽曲の登場人物になりきるという事が出来ていたのかも知れません。そして衝撃的なコメディエンヌとしての才と共に、誠実で熱い一面も野中さんの特筆すべき個性です。これからも続く沙南さんとのストーリー、そして残り少なくなった転入初年度の時間が感動的なものになる予感がひしひしとします。f:id:poka-raposa:20181208161833j:plain

田中美空さん(小等部6年)

田中美空さんは美しいです。ライブや公開授業で間近に見る彼女の美しさは大げさではなく世界基準だと思うし、内面の純粋さを感じさせる瞳の輝きや、真っ直ぐに通った芯の強さが滲み出る佇まい。見ているとこちらの心が洗われるような、透き通った美しさがあります。学院祭での田中さんは "良い意味で" 目立つ存在ではありませんでした。ダンスはこの半年で更に上達し、全体にしっかりと溶け込むようになりました。ステージを俯瞰する3階席から観ていると、フォーメーションの中にすぐ田中さんを見つける事が出来ない場面が幾つもあったのです。1年前には先輩たちに付いて行くのに必死だった田中さんは、今年の学院祭ではフォーメーションの後方から全体の屋台骨を支える役割を、とても楽しそうに演じていました。表情の柔らかさや表現の豊かさは彼女の中に芽生えつつある自信と余裕を感じさせ、その美しさに高い表現力が加わったら無敵の存在になってしまうのではないかと思うほどです。そして少ないながらも寸劇での「『時をかけるゆづみん』ってのもいいんじゃない!?」という台詞や、ありともさん爽葉香さんと共に3ガールズでのランウェイ、「オトメゴコロ。」での迫力のソロなど、魅せてくれる場面もありました。特に昨年の寸劇と比べると格段にナチュラルになった台詞の発声は印象的です。彼女の表現者としての成長曲線がいま大きな弧を描いているのは間違いなく、今年度のRoad To…で最も注目すべき1人だと思っています。

 

八木美樹さん(小等部6年)

八木さんと田中さんは 2017年度の転入組。そして今年は年下と年上の後輩が一気にできて、色々と難しい立場だった事も少なくなかったのではないでしょうか。でも2人とも自分をしっかり持っているというか、周りに流されない良い意味での頑固さ・マイペースさを持っているので、しっかりと自分に向き合いつつ成長を続けて来たように思います。学院祭での八木さんは、ダンスではもう既に上級生たちと比べても決して遜色なく、パフォーマーとしてしっかりとさくら学院の戦力になっているという印象でした。田中さんと同じく、 "気を遣われる" 立場だった去年から、今年は転入生たちから見れば頼りになる先輩になっているなあ、と。職員室、卒業生、記者の方など近くで見ている人たちも八木さんのパフォーマンス面での成長に賛辞を送っています。そして、八木さんはお芝居もしっかりできるんですよね。まだ演技というには至っていないかも知れませんが、台本をしっかり覚えて淀みなく台詞を発することができ、寸劇で見せたようなコミカルな空気も醸し出せる。演技力の伸びしろはすごくあるんじゃないかと思います。来年度以降また寸劇があるとすれば、更に大きな役どころを演じそうな気もします。どちらかというと控えめな性格の小6の2人ですが、彼女たちの物語はここから本格化するのだと思うとわくわくする気持ちを抑えきれません。

 

野崎結愛さん(小等部5年)

11人の生徒の皆さんを書いてきて、最後に最年少・転入して7か月ほどの野崎結愛さんのことを書こうとしているのですが…。多くの父兄の皆さんに同意して頂けると思っているのですが、野崎さんはスーパーですよね。何と言うか、パフォーマンスの質に言及する以前に、「人から見られるという星の下に生まれた人」って少数ながら存在すると思うのです。彼女はそんな人なんじゃないかなと思います。僕の中では菊地最愛さんに近いような気がします。まだ11歳の野崎さんはこの学院祭で全ての楽曲パフォーマンスはもちろん、寸劇、部活動、サクラデミー女優賞に参加しました。「小っちゃいからという目で見られたくない」。11月15日に職員室が野崎さんのお誕生日を祝うツイートに用いた言葉です。凄いです。見せ場、幾つあったでしょうか?目指せ!での一番長い自己紹介パートの台詞、ベリシュビでの「私らしくていいでしょ?」、寸劇での「はいパパ!」と後半の「絶対ヤダ…」、美術部でのパフォーマンス、デミー賞での演技と最終演技者を決める時の天使っぷり…。ダンスや歌ではまだまだ先輩の背中を追いかけている立場だとしても、彼女には舞台上でスポットライトを浴びるということに対する才能が生まれつき備わっているような華やかさがあります。そして、経験を積んで表現者としてのレベルが上がった先輩達と、彼女のような経験の少ないメンバーが持つ初々しさが舞台上に入り混じることもやはりさくら学院の大きな魅力なのだな、と改めて思ったのでした。いま必死に努力している野崎さんの姿が、紛れもなくさくら学院の未来を創って行くということなのでしょう。 

 

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森ハヤシさん(さくら学院担任)

最後に、普通ならばここはオマケのコーナー、というところなのですが、今回の学院祭ではやはりこの人にも触れない訳にはいかないと思い、森先生です。昨年度の寸劇もとても脚本が良く素敵なストーリーだと思いましたが、今回の「時をかける新谷」はご本人が強めの引き出しを開けたと語ったとおり、気合の入り方が違ったような気がします。それはもちろん新谷さん真彩さん麻鈴さんの演技力へのリスペクトと、自分ができる形で彼女達へのギフトを贈ったという事でもあり、同時に自身の本書きとしてのプライドをぶつけたような、渾身のストーリーになっていました。この寸劇だけでスピンオフ作品が作れないものか…と思ってしまいます。森先生の脚本とは直接関係ない話になってしまいますが、秀逸だったのは劇のラストにそのまま新曲「Fairy tale」が演奏され、「Starting Over 終わりなき世界」という歌詞と物語がぴったりとリンクしたことでした。ある意味で新曲を唄い終える瞬間までが寸劇の劇中と考える事もでき、そうするとこの劇はやはり何かに答えを出す物語ではなく、ここが新たなスタート地点だという事を宣言しているのだ、と想起させるようなエンディングが素晴らしかったです。森先生がこの物語に込めたメッセージの深い部分は、いつかどこかで聞く機会があれば良いなと思っています。

 

それから、多くの父兄さんが気になっていたであろう「結局、後半の "ボール" は当たる・当たらないどっちが正解なの?」問題ですが、個人的にはやはり当たる、が正解だったんだと思います(笑)。麻鈴さんが言ったように前半のホームルームはグダグダだったわけで、前半=敢えて外す→スベる、後半=新谷さんの位置修正で当たる→受ける、というのがキレイな流れだったのかなと…。ただ本番であのボールが当たるのはとても難しいので、外れた場合のシミュレーションもしっかりと準備していたのでしょう。あれがボールではなく金ダライだったら、当たる確率はグンと上がったのでしょうけど…(笑)。

 

 

写真引用:音楽ナタリー

【ライブレポート】さくら学院、中3の絆深まり森萌々穂の夢叶った「さくら学院祭」(写真12枚) - 音楽ナタリー