BABYMETALとさくら学院に出会った

いろんなテーマで、BABYMETALとさくら学院への愛を語ります。

ふしぎな安心感。 ~Aiko Yamaide LIVE Diary Vol.2~

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真冬にぽっかりと陽気が現れた1227日。

夕方、渋谷道玄坂から路地を入りライブハウスが建ち並ぶ一角、duo music exchangeのエントランス前に僕は立っていました。

 

山出愛子さんのシリーズライブ「Aiko Yamaide Live Diary」は、ソロアーティストとなってこれが3回目の開催。前回819日におこなわれたVol.1に続いてこのシリーズライブを観る事が出来ました。

(8月19日のライブに関するエントリはこちら)

poka-raposa.hatenablog.com

 

前回は100人規模のライブハウスでしたが、今回のduo music exchangeはオールスタンディングならば700人は収容できる規模です(この日は前方に椅子席が設置されていました)。集まった人たちの多くが、長く愛子さんを見守って来たファンの方々だろうと思われました。会場内からは、楽しい音楽の時間への期待。それから、その大きな舞台に立つ彼女を観る事に、少しばかり緊張の空気も感じられるようでした。

 

18:30を少し過ぎたころ。場内が暗くなり、エド・シーランの「Castle On The Hill」に乗って愛子さんが舞台に登場します。上手から現れた愛子さんは、遠慮がちに顔の前で手を合わせるようなしぐさ。舞台中央のキーボードを前にして鍵盤をつま弾き始めると、ギターの太田貴之さんとベースの村田悟郎さん、2人のサポートミュージシャンも舞台に現れ、一曲目「ひらりひらり」へ。柔らかいピアノの音色、包容力を増した歌声。そして、音を奏でる愛子さんが放つ美しさ。ライブが始まる前までは大きく感じていたduoのフロアが、一瞬にして愛子さんの空気に変わります。

 

続けて「ふたりことば」、「スマイル」とオリジナルを歌い、本人も語ったとおり「緊張をほぐした」感があった前半のパート。確かに緊張していたのか少しだけ声が上ずる瞬間もありましたが、「スマイル」の間奏では和やかで弾けるような楽しい演奏もあり、ギターの太田さんとはかなり息が合って来た印象でした。

 

ライブ中盤のカバー曲パートは、歌い終えた後のMCで話したように彼女の故郷である鹿児島出身のミュージシャンに絞った選曲でした。AIさんの「ハピネス」については、舞浜アンフィシアターでおこなわれた『さくら学院祭☆2016』でこの曲を唄い、シンガーソングライターを目指すきっかけになった曲の一つ、との言葉。この演奏は素晴らしかったです。自らが発するポジティブなパワーで、触れる人を元気にする事ができる愛子さん。強く温かいこの曲を奏でている彼女は、本当に女神のように見えました。f:id:poka-raposa:20190112215201j:plain

藤原さくらさんがメロディを手がけ上白石萌音さんが歌った「きみに」は、初期のハナレグミのような軽やかなカントリーフォーク。観客のみなさんの手拍子がパーカッションのように響きます。そして、意外な選曲だった「サイレント・イヴ」(辛島美登里)。静謐なピアノのイントロで会場の空気がまた変わりました。切なく。深く。深く…。クリスマスに纏わる楽曲に、自らに繋がりがあるとはいえ、とても難しいであろうこの曲を選ぶ。それをしっかりと演奏で聴かせきる。松田聖子さんをリスペクトする愛子さんの音楽に対する志、ライブに対する姿勢が垣間見えたようでした。

 

「高校生になって、自分自身はそのままだけれど、周りの人や出会った人のおかげで少し大人になれたと思う」という愛子さんの言葉。そして上地等さんが加わり、2ndシングル「Choice」の中でも最も意欲的なチャレンジだった「Beautiful」が演奏されました。透明感あるメロディにハングル語の響きも心地よく、更に等さんの幽玄なシンセサイザーの音色が楽曲の雰囲気を際立たせます。バックの編成が厚くなり、新たな表現が拓けたような「大切な君へ」。そして本当に気持ちが入っていた「Choice」を経て、ライブ本編は「同じ空の下」でクライマックスに。f:id:poka-raposa:20190113104104j:plain

8月のライブに参加した人たちは、間違いなくこの曲を愛子さんと一緒に歌う事を心から楽しみにしていたことでしょう。離れていても、同じ空の下にいる。また会えるその日まで、楽しみにしてる。それがアーティストとファンの関係性を表しているのだとしたら、その曲をライブの現場で一緒に歌うのは至福、というほかありません。そしてアンコールで起きた「同じ空の下コール」。観客も確かにライブを創っている一部なのだと実感した場面でした。このアンコールを考え実行した人たちは本当に素敵だと思うし、そこに参加できた事を心から嬉しく思います。

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そしてアンコールの一曲目。ライブの序盤からこの “スペシャルなこと” を言いたくて堪らなかった様子を見せていた愛子さんが歌ったのは、さくら学院2016年度の楽曲「アイデンティティ」でした。さくら学院卒業以来、様々な機会で大好きと公言してきたこの曲。曲の半ば、キーボードから離れ立ち上がってマイクを手に歌う姿からは、嘘偽りない「好き」と、この曲への強い想いが伝わって来ました。その好きさ故に気持ちが走ってしまった瞬間も含めて、感動的でした。演奏が終わって、愛子さんが2階席に向けて手を振ったその先。振り返って視線を上に向けてみると、この日会場を訪れていたさくら学院の生徒たちの笑顔が見えました。

 

「次で最後の曲です」

「え~!!」

「曲が終わってから “今のが最後でした” と言われるよりいいでしょ!しょうがないの!ライブは終わるものなの!!」

という、この日の白眉だったMCが飛び出して(もしかするとこのやりとりも今後のライブで定番になるかも?)会場が笑いに包まれた後、舞台に残った愛子さんは独りだけで再び「Choice」を唄いました。「やっぱりこの曲で歌っている内容が、いま一番伝えたいことだから」。ライブの締めくくりにピアノと声だけで奏でられたこの曲は、その言葉のとおり、この日最も高い純度で会場の隅々まで満ちていきました。f:id:poka-raposa:20190114004153j:plainこの日の事を思い出しながら、僕は愛子さんのライブを観て感じた不思議な安心感について考えていました。一つにはもちろん、奏でられた音楽の質があると思います。愛子さんの個性的で美しい声は前回に比べても中音域の豊かさと艶やかさが伸び、ライブハウスを包み込んで、聴く人の気持ちを落ち着かせるような響きがありました。その魅力的な声で歌われるオリジナル曲の内容は、パーソナルなテーマを歌っていても、手管に頼らないシンプルな歌詞。しっかりと他者に目を向ける姿勢によって決して自分の世界に閉じた印象にはならず、特に同世代のファンにとって共感できる、そばにあると安心できる温かい歌なのではないかと想像できます。鋭い事を声高に叫ぶのではなく、辛いときに静かに寄り添う。でも、ある意味で頑固なくらいしっかりと自分を持っている。そうやってフォロワーに道を示す「ゆるやかなオピニオンリーダー」のような存在に、愛子さんはなれる気がしています。

 

音楽的な要素に加えて、例えば、前回のライブでも印象に残った愛子さんの “しっかりした” 部分。それから、歌を聴き言葉を受け取ることで、過去が現在に・今が未来に繋がっていると実感できること。言い換えれば、SNSやメディアなどでの発信も含めて、時間がしっかりと繋がっている感覚。そして、愛子さんが時折見せる “心から” の言葉。しぐさ。舞台上の表現者が心から楽しんでいる姿、リップサービスではなくその場を離れたくないと言ってくれること。共有した時間の中に学びや糧があったとその場で言葉にしてくれること…。それらは16歳という彼女の現在地に拠るものもあるのかも知れませんが、僕に「確かなものを追いかけている」という安心感を与えてくれたように思います。

 

次回のLIVE Diaryは5月19日に同じ渋谷duo music exchangeで2部構成でおこなわれます。間違いなく、愛子さんは更に成長した姿を見せてくれることでしょう。僕は期待ではなくほとんど確信を持ってその日を待つことができます。彼女のソロアーティストとしての物語は、助走を終えて本格的に始まったばかりです。

 

 Aiko Yamaide LIVE Diary Vol.2(2018/12/27 渋谷duo music exchange)セットリスト

1.ひらりひらり
2.ふたりことば
3.スマイル
4.ハピネス(AI)
5.きみに(上白石萌音)
6.サイレント・イヴ(辛島美登里)
7.Beautiful
8.Choice
9.大切な君へ
10.同じ空の下
<アンコール>
11.アイデンティティ(さくら学院)
12.Choice(ソロ)f:id:poka-raposa:20190113111159j:plain