BABYMETALとさくら学院に出会った

いろんなテーマで、BABYMETALとさくら学院への愛を語ります。

さくら学院のこと。① ~The Road To Graduation 2017 Final~

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2018年3月24日に中野サンプラザで行われた『The Road To Graduation 2017 Final ~さくら学院 2017年度 卒業~』に参加しました。さくら学院に関しては、BABYMETALを巡る知の旅に不可欠な要素だと思うので、改めてしっかりと考えてまとめるつもりですが、ひとまずこの日の感動が鮮明なうちに少しだけ書き留めておきたいと思いました。そもそも、BABYMETALからさくら学院へと至った僕は、昨年秋の時点では現在進行形のさくら学院を追いかけるつもりはまったくありませんでした。そこから色々な縁があってRoad To Graduationに参加でき、2017年度の卒業式を実際に観ることができたのは本当に運が良かったと思っています。セットリストの全てを網羅はできませんが、特に印象深かった曲をいくつか思い出しながら書きたいと思います。

 

当日の座席は1階の10列目中央。適度に近く、しかも全体を見渡せる良い席です。僕の印象としては、セットリストはざっくり4部構成(『目指せ!』~『Jump Up』までが1部 ミニパティ・メドレー~『未来時計』までが2部 『未完成』~『My Road』までが3部 卒業式以降が4部)という感じでした。

 

セットリスト

1.目指せ!スーパーレディ ‐2017年度‐ 2.School days 3.Planet Episode 008 4.スリープワンダー 5.Jump Up ~小さな勇気~ 6.ミニパティ・メドレー(ダバダ♪サラダ de セボン☆アベニュー → ジャカパラ Goo Goo♡オムライス) 7.あきんど☆魂(購買部) 8.I・J・I 9.Let's Dance 10.ひらり ひらり(山出愛子) 11.未来時計(中等部3年) 12.未完成シルエット 13.My Graduation Toss 14.FRIENDS 15.My Road ーさくら学院 2017年度 卒業式ー 16.旅立ちの日に ~J-MIX 2017~ 17.夢に向かって

 

 

『目指せ!スーパーレディ』から『Jump Up ~小さな勇気~』まで

 恒例となっている『目指せ!スーパーレディ』でスタートした2017年度の卒業ライブ。まずは “ 自己紹介ソング ” というノベルティ的な扱いだと思っていたこの曲を初めて生で観て、そのパフォーマンスの完成度に驚かされます。確か2016年度のドキュメンタリーで倉島颯良生徒会長とメンバーたちが「びっくり箱」というテーマをこの曲に設定していたと思うのですが、勢いや楽しさを前面に押し出しつつも雑にはならず、むしろ曲が進むに連れて目立つのはワチャワチャ感の裏に潜む繊細さと緻密さ。もちろん森先生と生徒たちの息もコンマ秒単位で合っていなければいけないし、導線とフォーメーションの難しさ、そしてスポットが当たるグループ以外のメンバーが見事に静止しながら歌っていることも、ステージ全体が見渡せるとよく分かります。この曲はライブの掴みであると同時に、さくら学院がプロフェッショナルなパフォーマー集団であることをはっきりと宣言するものなのだと思います。

 

 さくら学院の特徴的なダンスのひとつにお芝居やジェスチャーを取り入れたものがあります。この日、卒業ライブで披露された中で特に素晴らしかった楽曲の一つが『スリープワンダー』でした。サビの躍動的なダンスも素晴らしいのですが、白眉はやはり随所に散りばめられたお芝居の要素です。今回のライブでは3階建ての舞台は使ったものの、ほとんどテクノロジーを用いずに歌と台詞と身体の動きだけで5分弱の曲の中に見事にファンタジーの物語を描き出していて本当に感動しました。特に2代目チシャ猫を演じる麻生真彩さんの存在感は素晴らしかったです。1人1人が物語の登場人物として演技し、同時に歌いながら踊る。語弊があるかも知れませんが、昨今のJ-POPシーンでは「ここまでやる」パフォーマンスはあまり目にする事ができません。

 

ミニパティ・メドレーから『未来時計』まで

 山出愛子生徒会長の日誌から予想されたとおり、ミニパティが披露されました。「どうしてもやりたくて、ずっと(職員室の先生に)お願いしていた」と日髙麻鈴さんが語っていたミニパティ。実際に目の前で見ると、やはりどうしても岡崎百々子さんを目で追ってしまいました。ミニパティのダンスは全身というよりもパーツを強調するものが多くて、人形のように下半身は固定しながら満面の笑みでサラダをかき混ぜる岡崎さんのキュートな姿が目に焼き付いています。『I・J・I』も主役は岡崎さん。そしてイントロを聴いてもまだにわかには信じられなかった『Let's Dance』は、パフォーマンスが終わった瞬間の大歓声が印象的でした。きっとベテランの父兄さん達にとってもうれしいサプライズだったのに違いありません。

 

一転してしっとりと、一曲ごとに良くなっていくように思える山出さんの自作曲『ひらり ひらり』を経て、この日のハイライトの一つであった『未来時計』へ。渋谷O-EASTで初めてこの曲の生演奏を観て、音源のみで聴くより何倍も良く聴こえました。年度毎の卒業生に贈られ、贈られた人たちだけが演じる事を許される卒業ソングは、やはり本人たちが歌っているのを観てこそ完成するものなのだと思います。この曲のダンスは素晴らしいです。スタンドマイクを使ったダンスは控えめでありながら凛とした美しさで、ミドルテンポのシンプルな曲調と相俟ってまるで80年代の黄金の歌謡曲ポップスのような雰囲気でした。こんなに素晴らしい曲なのに、このライブが終わればもう披露されることはない。毎年の卒業ソングがそうですが、その儚さと潔さはさくら学院そのもののようでもあります。

 

 『未完成シルエット』から『My Road』、 そして卒業式からラストまで

  ライブも終盤に差し掛かり、感動的な楽曲が立て続けに演奏されます。3月26日の『顔笑れ‼ FRESH!マンデー』でも話題になったように、『FRIENDS』の「ライバルと親友」パートを山出さんと岡田さんが歌ったのも、間違いなくこのライブのハイライトでした。そして、やはり2017年度はどうしても『My Road』という歌に集約されていくように思えます。渋谷での放課後アンソロジーでは新谷さんのアクシデントがあり、異例の2回目を歌ったほど生徒たちの思い入れがある『My Road』。この日、卒業ライブでの曲振りは岡崎さんでした。僕はこの曲を初めて全尺で聴いたとき、パンク・ロックだと思いました。さくら学院の楽曲は原則として外部のクリエイターが作りこの曲も例外ではないのですが、歌う本人たちに「そこまで見透かされていたのかと思った」「2017年度にしか歌えない」とまで言わせた赤裸々な歌詞が素晴らしいです。あまりにパーソナルな内容の歌詞は “閉じた” 印象になり過ぎてしまうものですが、生徒たちがお互いにぶつかり合い転びながらも進んでいくというこの歌は、僕たち他者に立場を置き換えても普遍性を持つ闘いの歌になっていると思います。ラップパート後の卒業生3人のソロパートでは会場全体に手拍子が響き渡り、ライブの本編は幕を閉じました。

 

 短い転換に続けて行われた卒業式では、まず新谷ゆづみさんが送辞の封筒を持って入場したことに驚かされました。しかしながら実際に送辞の場面を見ると、これは純粋にベターな人選だったのではないか、と感じます。次年度の生徒会人事の影響もあったとは思いますが、日髙さんの世界観でも麻生さんの情感でもなく、新谷さんの「端正さ」が選ばれたのはこの日のライブの流れからは納得でした。端正で爽やかで感動的な素晴らしい送辞でした。そして卒業式のあとは定番の『旅立ちの日に』、ラストの『夢に向かって』をパフォーマンスしてこの日のライブの全ての楽曲が終了。最後の2曲で印象的だったのは、『夢に向かって』の曲振りの場面で(今日(4月8日)更新された山出さんの最後の学院日誌にもその事が書かれていますが)、終わるのを惜しむように一言一言を紡ぎだす山出さんと、それを聞きながら一生懸命に涙を堪え頷く在校生たちの姿。特にスクリーンに映し出された吉田爽葉香さんが、山出さんの言葉に「はい」と口の動きだけで応えたシーンは感動的でした。

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 僕がBABYMETALからさくら学院へ至ったきっかけは、その魅力の本質が成長のドラマにあり、それを追いかける事でただ音楽やライブを「コンテンツ」として受け取るだけよりももっと深くて有機的な感動体験(BABYMETALとは全く異なる)ができるのではないか、と思ったからでした。そして初めてライブを観て、卒業公演の現場を体験して分かったのは、成長のドラマとパフォーマンスの質が密接に結びついている事こそが表現者としてのさくら学院の最大の特徴なのだということです。成長のドラマをドキュメンタリーとして見せる事はよくあります。10代前半にして驚くほど高いクオリティのパフォーマンスを見せるアーティストもたくさんいます。けれどもパフォーマーの成長過程をそのままエンターテイメントとして打ち出し、更にステージ上の表現に昇華する事に成功しているグループを、僕は他に知りません。何よりも “同じメンバーで活動できるのは1年間だけ” という揺るがない事実は、思春期のパフォーマーたちの心に強く作用し、時に信じられないほど感動的な瞬間をステージの上に創り出す原動力になります。それを、2017年度の卒業公演を体験して実感したのでした。

 

終演後に「さくら学院もBABYMETALも、日本の芸能界のセオリーから見れば “一線を越えている”」というツイートをしたように、僕はベビメタとは違う意味でさくら学院というプロジェクトも相当に「クレイジー」だと思っています。もちろん完全に良い意味でです。今後も、このブログでそれを少しずつ探っていってみたいと思います。