BABYMETALとさくら学院に出会った

いろんなテーマで、BABYMETALとさくら学院への愛を語ります。

「Story」を描いています。②

第一話を公開した後の皆さんのあたたかい反応に驚いています。ありがとうございます。ほんとうにありがとうございます。

 

たくさんの優しいコメントを頂いてしまい、なんだか申し訳ありません。キャラクターの設定などについては事前に少し準備をしたのですが、物語についてはほとんどプロットというものを用意せずに、出たとこ勝負のような感じで書いていますし(だから行ったり戻ったりでとても時間がかかります、ダメですね)、基本の文章ルールが身に付いていないので、読んでいて気持ちが悪くなることもあると思うのです。そんな時は、そっとページを閉じてくださいね。実は、大学は社会学部でした、pokaです。

 

僕が書いている物語には、複雑な仕掛けも、特別なメッセージもありません。登場する設定、環境、全ては彼女たちが動いたり喋ったり、その仕草で、実際は文字にしていない心の動きを、読んでくださる人が少しでも感じられるような、その装置としてのものと考えて書いています。キャラクターを瑞々しく描けるようにだけ、心がけて書き進めて行きたいと思います。

 

さて、今回の第二話では、とても嬉しいプレゼントを頂きました。

いつも仲良くさせて頂いているkanamyyyさん 

kanamyyy☺︎dayoooo (@kanamyydayo) | Twitter

が、なんと、素敵な素敵な挿絵を描いてくださいました。本当に、心から感謝しかありません。

 

僕の文章には勿体ない、本当に素晴らしい絵なのですが、逆に言うと、文章がダメでもこの絵を見るだけでも価値がありますので、ぜひ、第二話も皆さんに読んで頂きたいです!!(笑) 

 

今のところ、十二話の中で幾つかのお話で絵を描いてもらえる予定になっています。次の挿絵がいつ登場するかまだ分かりませんが、こちらはぜひ、心のどこかで楽しみにしていて頂ければ、と思います。

 

第二話はこちら

https://burnone0513.goat.me/pw7hXKsoWQ

 

 

 

 

*** 過去の公開分はこちら ******

 

第一話はこちら

https://burnone0513.goat.me/pw6DPVZEOY

 

 

「Story」を描いています。①

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BABYMETALのことを書きたくて始めたこのブログですが、いつの間にかさくら学院についての文章を綴ることが多くなってきました。そして、いま僕はさくら学院2019年度 中等部3年の4人、"仲さん" を主人公にした物語を書いています。

 

お話のアイデアは、2018年度の学院祭が終わった頃に生まれました。素晴らしかった寸劇「時をかける新谷」を観て、感動して、さくら学院のメンバーを登場人物にしたフィクションを書いてみたいな、と思ったのがきっかけです。その時は実際に書くことはなかったのですが、今年度に入ってから、そのストーリーを思い返してみた時、なんとなく仲さんの4人を中心に据えたら書けるんじゃないか、と思い始めました。2019年の夏頃のことでした。

 

僕がTwitterアカウントで仲良くさせて頂いている皆さんは素晴らしい創作の才能を持っている方が多いです。絵を描く人、フィギュアやグッズを作る人、楽器を弾く人、歌を唄う人…。それらの創作物や表現に触れるといつも、それを受け取る幸せと共に、まるで自分の想いを代弁してもらえたような気持ちにもなり、感動するばかりでした。そして、そのいずれの才能も持っていない自分にも描ける「ファンアート」は無いかと考えた時、オリジナルのストーリーを紡ぐことならばかろうじて可能なのではないか、と、しばらく前からうっすらと思うようになっていました。

 

昨年の秋頃から、少しずつ、本当に少しずつ書き進めているのですが、正直に言って怖さがあります。創作のお話を書くのは初めてだし、普段からたくさんの良質な文章に触れているであろう、中には文章のプロフェッショナルもいらっしゃるかも知れない皆さんに、執筆の基本も身につけていないど素人の自分が書いた物語を、読んでもらうことになるかも知れない。僕は文章を読むのも書くのも好きで、さくら学院のことも大好きです。そしてこのお話を読むのも、さくら学院が大好きな人たちです。だからこそ、怖いという気持ちが強くあります。

 

それでも、2019年度、自分が全力で彼女を応援したという証を残したい気持ちが強く、まずは完成させることを目標にして、この「Story」を書き進める事を決めました。なので、本質的にはこれは自分の為の創作です。誰かに届けるという意図で書いてはいません。

 

お話は、全部で十二話にすることが出来たらいいな、と思っています。12というのは大切な数字です。2019年度のさくら学院のメンバーたちがそれぞれの名前で登場する、パラレルワールドにおけるフィクションで、僕自身はこれを "ファンタジー" のつもりで書いています。登場する各キャラクターは、名前を使わせて頂いている本人からインスパイアを受けた部分もありますが、どちらかというと、「このキャラクターをこの人に演じてほしい」という、当て書きをしている感覚で書いています。

 

 

お話は、公開できる形になったものから、外部のブログサイトにアップロードしていきます。こちらは、デフォルトで縦書きが可能な数少ないブログサイトになります。登場人物に対して愛と敬意を欠いた描写だけは絶対にしないように気を付けていますが、もしあったような場合には、すぐに戒めて頂けると嬉しいです。

 

ぜひ、お時間の許す時に、読んでやって下さいませ。

よろしくお願い致します。(poka)

※ブログサイトはスマートフォン、edge、Google Chromeでの閲覧をおすすめします。

 

第一話はこちら

https://burnone0513.goat.me/pw6DPVZEOY

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくら学院のこと。④ ~さくら学院祭☆2019~

「2010年春に開校し、『夢に向かって』の1曲をもって初お披露目させて頂いたのが、TIFのステージ。そのステージを終えて、それぞれメンバーの個性を発揮するステージとして、通常の学校行事に沿って創ったのが「学院祭」のコンセプトになります。ライブや寸劇という基本構成はこの頃から変わってないですね。」

【出典:OVERTURE 020(徳間書店)】

 

これは9月に出版された雑誌OVERTUREの連載企画「SAKURA GAKUIN LIBRARY」で "職員室" が学院祭について語っている言葉です。さくら学院として初めての単独イベントであった学院祭は、初期の段階からバラエティに富んだ内容の成立を目指していた事が分かります。そして、楽曲のパフォーマンスだけに留まらず寸劇やトークなどでも自らが主体となって自分たちの個性を魅せる、観に来てくれた人たちを楽しませる、そんなチャレンジを続ける生徒達の姿は、2010年度から現在に至るまで数々のドラマを生んできました。

 

さくら学院祭☆2019は10月19日(土)・20日(日)の2日間にわたって、KAAT=神奈川芸術劇場で行われました。僕がさくら学院をリアルタイムで追いかけ始めたのはちょうど2017年度の学院祭が終わった頃。当時まだ父兄になっていなかった僕のTLに突然踊った「パンプキンは黙ってて!」という言葉は強烈な印象を残しました。それからずっと "そのシーン" を観たかった僕は、年が明けて2月にリリースされた映像作品を観て、サクラデミー賞についてのエントリを書いています。

poka-raposa.hatenablog.com

 

 さくら学院祭☆2019はこの2017年度以来の2日間そしてKAATでの開催ということで、公演が決まってからずっと楽しみで仕方がありませんでした。10月19日は現地で、20日の公演はライブビューイング(22日開催)で観た学院祭を、今回は時系列のレポートではなく、寸劇・サクラデミー女優賞・パフォーマンス・@onefiveというそれぞれの場面で分けて簡単に振り返ってみたいと思います。f:id:poka-raposa:20191027213604j:plain

 

◆寸劇 ~積極的に壊すということ ~

2018年度の学院祭の寸劇「時をかける新谷」は、観ている全ての人の記憶に残る、まさに名作と呼べる作品でした。迫真の演技、独唱、整合性を保つにはミスが許されない難しい台本。そして何よりもそれをたった1回きりの本番でやり切った演者の努力と集中力。間違いなく、長いさくら学院祭史の中でも特別な瞬間として刻まれた場面だったと思います。僕は2019年度が始まってからずっと「今年の寸劇はどうなるんだろう?」ということが気になっていました。17年度と18年度にはメンバー間(なかんずくその当時の中3)の心の機微をテーマとして掬い取り感動的な物語に昇華させた森先生が今年度はどんな本を書くのか、興味がありました。実際にどれくらいの時期から台本が書き始められるのかは分かりませんが、4月~5月には森先生が寸劇について不安がっている姿も見られました。

 

夏を過ぎた頃になっても、ストーリーなどは全く予想がつかなかったのですが、前年度とは趣向、或いは「形」をがらりと変えてくるのではないか、と思っていました。 

 森萌々穂さんがFRESHで19年度生徒会人事を寸劇のテーマにすると森先生に言われて「いいんですよ、今年度はそういうのは」と言い放ったように、今年は予定調和に陥らず、何か積極的に枠組みを壊すようなものになる気がしていました。

 

19日の公演で「歩みの映像」に続いてチャイムの音が鳴った時、まずそれは舞台上に意外な形で表れます。言うまでもなく、暗転中にセットされた高座と、出囃子と共に羽織を着て現れた八木美樹さんです。美樹さんは「皆様、一杯のお運びで、まことに有り難く御礼申し上げます…」と滑らかに前口上を始め、今年は感動は一切なく寸劇というよりコントであるから、肩の力を抜いて観てほしい。仕込みの客かというくらいに笑ってもらって構わない、「なにせ私たちは "サクラ" 学院ですから」と見事なオチを付け、劇場にざわつきが残る中、上手の舞台袖に去って行きます。

 

この予想外の演出はあらかじめ今年の寸劇が去年とは全く異なる方向性のものである事を宣言し、その後に起こるドタバタが「力技」ではないことを観客に理解させるという事があったでしょう。ただしそれは決してハードル下げるという意味合いではなかったように思います。実際にFRESHマンデーの振り返りでも森先生は今回のシナリオの難しさに言及していたし、僕も19日の公演ではお腹を抱えて笑いながらも、これは凄く難しいんじゃないか?と思って観ていました。

 

生徒のみんなが学院祭のリハーサルをしている教室で、森先生の遺体が発見されます。戸惑う生徒たちを率先して森萌々穂さんが事件解決を目論み、そこにハロウィンの仮装をした生徒たちが現れ、幽霊になった森先生も入り乱れてドタバタ劇を巻き起こし…というあらすじ。例年のホームルーム式では森先生が生徒たちを指名する形でシナリオが進みますが、今回は幽霊となってしまった森先生は直接生徒たちと台詞を交わせず(ストーリーの "転" となる野崎結愛さん木村咲愛さんと短く会話する部分のみ)、エアツッコミのような形で狂言回しを務めます。全体で言えば、今年の寸劇は物語性は全くと言って良いほどなく、乱暴な言い方をしてしまえば「Pumpkin Palade」への壮大な曲振りのようなものなのですが、森先生殺人事件というシュールな設定の上に、仮装をした生徒たちの渾身のボケがテンポよく放たれ、舞台上では一時として笑いが途切れる事のない上質のコントが演じられていました。

 

2018年度の寸劇は台本の完成度も素晴らしく、ピンポイントでのシリアスな演技と、ミスをすると辻褄が合わなくなってしまう恐れがあるシナリオを、生徒たちが1回のチャレンジでやり遂げてゆくさまも含めて感動的なドラマを生みました。対して、2019年度の寸劇でフォーカスされたのは、徹底して笑いを取ること。その為に劇団プレステージの向野章太郎さんがゲストの演出家として招かれ、昨年とは全く異なるこだわりを追求した内容となっていました。振り返りで森先生も言っていた通り、普段ナチュラルな演技を指向することが多い生徒たちにとって、初めにコントであることを宣言したうえで、無茶な設定をオーバーな演技でしっかりと笑いに持っていくのは、想像以上に難しかったのではないかと思います。

 

笑いのプロではない彼女たちが今回の学院祭の寸劇で見せた表現者としての矜持は、シンプルに、「やり切る」ということでした。サイコパスな演技で笑いと少しの空恐ろしさを感じさせた萌々穂さんと吉田爽葉香さんはもちろんのこと、例えば戸高美湖さんや野中ここなさんの役どころは仮装による出オチになり兼ねないところを、パワフルな動きと発声を生かして見せ場を作っていました。逆に、他の生徒が全力でボケる中で、顔を隠して静に徹した白鳥沙南さんと佐藤愛桜さんは良いアクセントに。そして20日の寸劇に登場した藤平華乃さん演じる藤畑華乃三郎は、まさにその「やり切る」を体現するようなキャラクターで、考えてみれば生徒会長である華乃さんのパーソナリティが今回の脚本のアイデアの源泉となったのかも知れません。

 

学院祭の寸劇は、生徒たちに近い位置にいる森先生が脚本を書くことでその時の生徒たちのリアルな心情が反映されるのがここ数年の常だったのですが、今年は無理やりドラマを作り出そうとせずに全く異なったチャレンジに振り切ったのは英断だったと思います。固まりつつあった寸劇のイメージを積極的に壊し、2日間で台本を大幅に変えて挑んだ2019年度の寸劇。振り切ることへの確固とした意志と、舞台上で全力を出しやり切る姿勢は、2018年度に劣らず、生徒たちと森先生の表現者としてのプライドを十分に感じさせてくれるものでした。

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(写真引用:音楽ナタリー)

さくら学院祭で新曲や新ユニットお披露目、初のXmasライブ開催を発表(ライブレポート / 写真24枚) - 音楽ナタリー

 

◆サクラデミー女優賞 ~もはや余興ではない~

公演の中盤に設定される「サクラデミー女優賞は誰だ?!」は、森先生曰く学院祭の息抜きの時間であり、「私(森先生)がはしゃぐコーナー」という位置づけです。しかしながら、近年ではこのコーナーは森先生が言う息抜き・余興の時間ではなく、生徒たち自身のアイデアと演技力をぶつけ合う真剣勝負の様相を呈することが多くなってきました。

 

19日に吉田爽葉香さん、森萌々穂さん、野中ここなさん、田中美空さん、佐藤愛桜さん、木村咲愛さんの6人。20日は藤平華乃さん、有友緒心さん、白鳥沙南さん、八木美樹さん、戸高美湖さん、野崎結愛さんの6人がエントリーされた今年のサクラデミー女優賞。まずKAATで実際に観た19日ですが、これがお世辞ではなく本当に全員良かったのです。

 

ストレートでピュア、この年齢でしかできない演技をした咲愛さん。たどたどしさと計算高さのギャップが魅力的だった愛桜さん。素の姿と地続きのようなナチュラルな演技の中に普段なかなか見せない女の子らしさでドキリとさせた美空さん。電光石火で結愛さんとのコンビネーションによる完璧なオチをつけたここなさん。キャラ設定、髪型を使った演出、台詞回しまで、彼女の神髄である「準備」の周到さを見せた爽葉香さん。そして、演じるというよりも "ももえ" である事を貫いた萌々穂さん。拍手の音は拮抗し、最終的には結愛さんのジャッジで爽葉香さんが1日目のサクラデミー女優賞に輝きました。

 

更に、ライブビューイングで鑑賞した20日も前日に負けない素晴らしさでした。自ら先陣を切り、萌々穂さんを完璧に落とした緒心さん。前日のここなさんの演技を伏線に使い、なすおを相手にコミカルでキュートな女子を演じた美樹さん。美湖さんはポテンシャルは高いと思うのですが、いかんせん、なすおとの組み合わせは爆弾過ぎましたね(笑)。相手を「制圧」する術を分かっている恐るべき小学生、結愛さん。ストレートな言葉を詰め込み、想いを伝えたいという気持ちを強く感じさせた沙南さん。まさに彼女にしかできないやり方で、個性的なアプローチをした華乃さん。結果は、緒心さんが昨年の「来年は勝ちます」の宣言どおりの優勝となりました。"ありともり" の近すぎる距離間に男女問わず会場のあちこちから悲鳴が上がっていたのはLVでも伝わってきたし、納得の結果だったと言えるかも知れません。

 

のちの振り返りで森先生が「ガチが過ぎる」と言ったような真剣勝負の場面が、今回も見られました。なかでも、沙南さんが泣き出してしまった、それも「泣きそう…」と言いながら泣いてしまった場面は、胸に迫るものがありました。今年度のサクラデミー女優賞では、裏の設定、自分と相手役との関係性や、演じている人物の性格までもしっかりと考えて本番に挑んだ生徒が多かったように見えました。

 

僕は以前の空気感を直接は知らないのですが、近年のサクラデミー女優賞は即興で瞬発力を競うというよりは、設定を咀嚼し、準備し、時には相手役と打ち合わせをして、「一場面」を演じる総合力を競うコーナーになって来ているように思えます(17年度はそこに日髙さんと新谷さんの天才的なアドリブが加わって、永久保存版とも言える名場面を産み出しました)。

 

美樹さんに、脚本賞を差し上げましょう、と言った森先生の言葉も、それをはっきりと示しているようでした。台詞の演技そのものよりも、プロデュース能力を競うコーナーなのです。それは、みんな真剣になりますよね。さくら学院生たちの表現に対する貪欲さを考えれば、このコーナーは余興というにはチャレンジの価値があり過ぎるものなのだと思います。更に、時間の尊さを誰よりもよく知る彼女たちの頭の中には、過去に繰り広げられた名場面の数々が「基準」としてあるに違いありません。そしてこれは職員室や森先生主導のものではなく、生徒たちの側から生まれた潮流なのだと確信しています。さくら学院のグループとしての着実な成長は、こんなところにも表れているのではないかと思ったりもします。

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(写真引用:音楽ナタリー)

 

 ◆パフォーマンス ~「史上最強」への途上~

ameblo.jp

2019年度、さくら学院の9代目生徒会長に就任した華乃さんは、迷いなく「史上最強のさくら学院」という言葉を用いて今年度のさくら学院が目指すものを表していました。5月の時点ではまだそれがどのようなものか僕には分からなかったのですが、夏以降のライブパフォーマンス、そして学院祭のステージを観て、ぼんやりと分かってきた気がしました。

 

 ◇セットリスト

10月19日(土)

1. 目指せ!スーパーレディー ‐2019年度‐

2. Hana*Hana / 3. ベリシュビッッ / 4. Hello! IVY

寸劇「さくら学院のハロウィン殺人事件!?」

5. Pumpkin Parade(w/森ハヤシ・向野章太郎) / 6. Let's Dance

~2019年度サクラデミー女優賞は誰だ?!~

7. キラメキの雫 / 8. #アオハル白書

9. マシュマロ色の君と / 10. Magic Melody

~アンコール~
11. Pinky Promise(@onefive)/ 12. FRIENDS

 

10月20日(日)

1. 目指せ!スーパーレディー ‐2019年度‐

2. 負けるな!青春ヒザコゾウ / 3. FLY AWAY / 4. オトメゴコロ。

寸劇「さくら学院のハロウィン殺人事件!?」

5. Pumpkin Parade(w/森ハヤシ・向野章太郎) / 6. Let's Dance

~2019年度サクラデミー女優賞は誰だ?!~

7. 君に届け / 8. #アオハル白書

9. マシュマロ色の君と / 10. Carry on

~アンコール~
11. Pinky Promise(@onefive)/ 12. 夢に向かってf:id:poka-raposa:20191103211048j:plain

(写真引用:音楽ナタリー)

 

学院祭のセットリストを見ると、寸劇やサクラデミー賞で区切りができることもあり、ブロックが分かりやすく形成されています。今年度の初披露となる「目指せ!スーパーレディ」で幕を開け、TIFやサマーライブで磨いた楽曲で安定のパフォーマンスを魅せた前半。寸劇から2年ぶりの「Pumpkin Palade」、そしてこちらも17年度卒業公演以来の「Let's Dance」を披露した中盤。サクラデミー女優賞を挟み、19日は「キラメキの雫」、20日は「君に届け」と今年度のキーとなりそうな楽曲から、初披露も含め4曲を踊った本編の後半、そしてアンコール。

 

個人的に印象に残ったのは、寸劇終わりの「Pumpkin Palade」に続く「Let's Dance」と、後半に新曲「#アオハル白書」を含む4曲を披露したブロックでした。「Let's Dance」に関してはイントロが鳴り響いた瞬間に思わず「来たか!」と声に出してしまったほど個人的に今年度のパフォーマンスを待望していた楽曲で、TIFでは、Hot Stageの1曲目にやったらみんなぶっ飛ぶと思うんですけどねえ…なんて冗談を言っていたのですが、正直に言ってこのタイミングで観られるとは思っていませんでした。17年度Road To Graduationのドキュメンタリー映像でもこの「Let's Dance」のレッスン風景が大きくフィーチュアされていましたが、在籍した3年間で初めて本気で怒った岡崎百々子さんの姿とともに、「覚悟してほしいんですよ、比べられることを」というダンスの先生の言葉が強く印象に残っています。

 

歌唱パートが無く12人全員が緻密かつ激しい振りを揃えなければならないそのパフォーマンスは、さくら学院の楽曲の中でもスペシャルと言えるものです。それだけ観る側のハードルは上がり、演じる側のプレッシャーも増すことは間違いないと思います。19日、KAATの3階席から観た初日の「Let's Dance」。俯瞰で観ると12人が一つの生き物のように有機的に動き回り、そのまとまりは圧巻でした。トラックにボードヴィル風のシークエンスを加えたり新たな振りが入るなどして、17年度バージョンよりもショーアップされていて、ダンスでは美樹さん美空さん美湖さんの3人がパフォーマンスにエネルギーを与えるように存在感を放っていました。華乃さんはむしろ抑制した凄みを効かせ12人をまとめていた印象でしたが、これはもう一度映像を観ると異なった印象になるかも知れません。

 

そして、今年度の新曲「#アオハル白書」。音源が解禁された当初から生徒たちが言っていた通り、BPMが速く変拍子も入りロックな曲調で今までのさくら学院にはないテイストの楽曲です。そこに短い歌詞を矢継ぎ早に歌いながら踊るのですから、相当に難しいパフォーマンスであることが想像できます。19日の初披露ではイントロから上がる凄まじい歓声が父兄さんたちの期待値の高さを表し、全身を大きく使いながら激しく立ち位置を移動し歌い踊る12人に、僕は目を瞠っていました。ちなみに、KAATの3階席に座ってステージを見下ろした時、まず初めに驚いたのは、エグいまでに細かく貼られた立ち位置を示すビニールテープでした。そして、どの曲でも最高の笑顔で歌いながら、ごく短い時間で縦・横・斜めに滑らか移動してピタリと立ち位置に着くさくら学院のダンスは、至近距離で観る輝きとはまた違った凄みを感じさせるものでした。

 

それにしてもあらためて思い返してみると、学院祭のプログラムの中でも難易度が高いと思われる「Let's Dance」と「#アオハル白書」、その2曲でも "淡々と" パフォーマンスについて行く愛桜さん、美湖さん、咲愛さんの転入生3人は凄いですね。ダンス経験の差による "いびつさ" はさくら学院では決して欠点ではなく、魅力の一つとも言えるものだと思います。でも、学院祭2日間のパフォーマンスで強く印象を残したのは、「未経験だった年少のメンバーが必死に食らいついて行く」というドラマ性ではなく、転入生も含めたチームの平均的レベルがこの時期において極めて高い水準まで達しているということでした。ダンス経験が長いからこそ、さくら学院独特のコレオグラフィーに戸惑いもあったはずの美湖さんはもはやエース級の輝きを放っていたし、愛桜さんと、そしてとりわけ最年少の咲愛さんの努力がどれほどのものであったか。想像すると胸が熱くなります。

 

激しく難易度の高いダンスを魅せてくれた楽曲も印象深かったのですが、僕が個人的に学院祭のクライマックスと感じたのは、本編のラスト2曲です。19日は「マシュマロ色の君と」~「Magic Melody」。20日は「マシュマロ色の君と」~「Carry on」というセットリストでした。これは一見して分かるように、「歌」で勝負をかけてきているパートです。サマーライブで見せた歌への挑戦、偉大だった2018年度のあの「歌」を追いかけ、追い付こうとするこころざしが、学院祭で再び僕の心をつかんで揺さぶってきたのです。

 

「マシュマロ色の君と」でのユニゾンの、遠くまで響き渡らせたいというある種の必死さを感じる声の重なり。中等部3年の4人が担うソロパートも、なかんずく爽葉香さんが歌う「君に 感じてる」は、感動的でした。4人は決して歌姫というタイプのシンガーではないのですが、さくら学院のスタンダードをしっかりと守りながら、今は楽曲に自分たちなりの "心" を注ぎ込んで表現することを見据えて絶え間ない努力をしている。彼女たちの歌を聴きながら、そんな事を考えていました。そして、特別に推しているからという贔屓目があることを差し引いても、僕には爽葉香さんの歌唱力が「特別なもの」の領域に入りかかっているように思えてなりません。

 

華乃さんが目指している「史上最強」とは何だろうと想像した時、学院祭のパフォーマンスから感じ取れたものは、全体のレベルが非常に高い状態でチームとしてとてもコンパクトにまとまっているという事でした。そして視野をより外へ向けることを強く意識してパフォーマンスが出来ている、という事。ダンスも歌も、トリッキーではないけれどとても真っ当で総合力の高いパフォーマンスが、受け手側の求めるものを強く意識しながら舞台上に表現されているように思います。

 

自分(たち)との戦いがまずあり、それが他のグループでは見られないような奥深いドラマを生み、表現にも強く影響する。それはさくら学院の魅力であり特徴であると思っているのですが、今年度は内側に向けるエネルギーの割合が低く、その分パフォーマンスの純度を高めることに早い時期から集中できていたのではないかと想像しています。勿論それは各年度の個性であり、良し悪しではありません。いずれにしても、いま華乃さん始め中3の4人には、2019年度のさくら学院が3月の時点で "どうなっていたいか" がはっきりと見えているはずです。残り5ヶ月でどこまで辿り着くのか。一瞬でも目を離してはいけない、と強く思います。

 

◆@onefive ~僕たちはもう一つの奇跡を見ることができるか~

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それは不思議な時間でした。そのあと舞台上で何が起こるのか、その場にいる多くの人が分かっていながら、声も立てず、身動きもせず、固唾を飲んで見守っている、という様子でした。10月19日、さくら学院祭の一日目。本編が終わりアンコールの拍手の向こうから、薄靄のかかったようなSEが流れ始めます。数日前から何度も繰り返し観た映像のバックトラックである事はすぐに分かりました。舞台照明だけが静かに飛び交い、心地よいエレクトロサウンドがしばらく流れると、スクリーンにあの見覚えのある映像が映し出され、そこで初めてKAATは大きな歓声に包まれました。後姿だけは観たことがあった4人の少女たち。色とりどりの衣装に身を包み舞台上に進み出た彼女たちは、僕たちがまだ聴いたことのない曲で、優雅に滑らかに、美しく踊りました。そして、「ありがとうございました。@onefive(ワンファイブ)でした」と言って深々とお辞儀をしたのでした。

 

@onefiveがSNSでその存在を明らかにし、同時に複数の芸能メディアが「全員15歳の謎の4人組ガールズユニット」として紹介したのは10月15日のことでした。公式YouTubeチャンネルにアップされたティザー映像には多くのヒントが隠されているように見え、様々な角度から検証をしてこの「謎の4人組」がさくら学院中等部3年の4人であることを予想する声が、ファンの間からは上がっていました。

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 そして結果的に、予想されたとおり@onefiveは森萌々穂さん(=MOMO)、有友緒心さん(=GUMI)、藤平華乃さん(=KANO)、吉田爽葉香さん(=SOYO)からなるガールズユニットであることが学院祭初日のアンコールの時間で明らかにされた訳ですが、現時点でのアクションはSNSを中心とした限定的なものとなっています。しかしながら、やはりこのユニットは特に彼女たちを以前から知る者にとっては "語るべきこと" が多すぎるのもまた事実です。

 

まず、事前告知からローンチ後も各種のSNSを上手く使っていて、そのアクションは非常に現代的です。作り込んだオフィシャルショットの質の高さと、くだけたオフショットのバランスの良さ。メンバーが選んだプレイリストや、本人が投稿するテキストで感じさせる親近感。SNSは本格的なプロモーション活動に入る前の段階でもファンの受け皿として機能するし、最も手軽でコストがかからない手段です。Music Video撮影時のオフショットは新たに時間とお金をかける必要も無いし、しかも使い方次第では大きな効果があります。更に、そのMVの別バージョンも近日公開予定とのこと。そのあたりの "一回の現場で複数の露出を可能にする" アイデアが上手く回っているからこそ、2019年度が残り半年を切ったこのタイミングでも、@onefiveが(形の上では)独立して活動できているのでしょう。そう、今の時点では彼女たちは全員まだ「さくら学院の最高学年」であり、卒業へ向けた重要な時期を過ごしているという事は忘れてはいけないと思います。

 

@onefiveに関して、今の活動では本来訴求したいファン層へ向けての認知がなかなか広まらないという見方もありますが、個人的には現時点ではこれで良いと思っています。認知を広げることは重要ですが、せっかくファンを獲得できても今はまだそこにアピールできる素材は限られているし、卒業を控えたさくら学院の活動に加えて高校受験も待っている彼女たちには、なかなか身軽な活動は難しいでしょう。ユニットとしてアミューズのアーティストページに記載がなく、個人のアーティストページにも記載がない現状(2019年11月4日現在)、@onefiveは「プレデビュー」という扱いなのではないかと想像しています。これから3月までの期間で様々なマーケティングもされるでしょうし、本格的なデビューへ向けての検討がされ、卒業後に1アーティストとして本腰を入れた活動が始まるのではないかと考えています。

 

そして、現時点で@onefiveの唯一の作品が、デビューシングルとなる「Pinky Promise」です。これは音源、Music Videoの映像ともによく練られた、上質の表現になっていると思います。

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楽曲はアミューズ所属の辻村有記さんと、エイベックスの新レーベルA.S.A.Bに大橋トリオさんなどと共に立ち上げから参加するThe Charm Parkさんによる共作。歌詞は@onefiveの4人と同じ15歳のSSW、YURAさんによるものです。「Pinky Promise」のお披露目となった学院祭の舞台では、@onefiveのユニット名について、メンバーが15歳であることと共に、YURAさんも含めた5人という意味もあると説明され、このYURAさんが描く歌詞がユニットにとって非常に重要であるという事を窺わせました。 そしてもちろん、コレオグラファーとしてMIKIKO先生の名がしっかりとクレジットされています。

 

曲調はエレクトロポップと言っていいと思うのですが、北欧音楽とエレクトロニカをベースに持つ辻村さん、AORから影響を受けアコースティックと打ち込みを融合した温かみあるサウンドが特徴のCharmさんの2人の音楽性を知ると、この曲が持つ個性がよく理解できるような気がします。そしてMusic Videoの映像は楽曲にもよく合っているし、編集は秀逸と言えるものです。さくら学院の制服とは全く異なるカラフルなファッションに身を包み、ヘアスタイルをストレートで揃え、華やかながらも決して品を失わないメイクを施した@onefiveの4人は、無機質なコンクリートや真っ白な背景、風になびく草木をバックに歩き、戯れ、踊ります。特に凝った演出も無くシンプルな作りではあるのですが、寄りのカットも多く、3分強の時間の中に彼女たちのみずみずしい美しさが凝縮されたような素晴らしい作品です。

 

そしてこれは余談みたいなものになりますが、僕は@onefiveが見せる「仲の良さ」がやっぱり好きです。彼女たちが現時点で持っている武器を考えてみると、15歳にしてダンスや歌、表現の基礎が確たるものであることと、数多くの舞台での経験があること。デビュー作でもかなり贅沢なクリエイター陣を招き、質の高い表現が出来ていること。だと思います。そして表現と直接は関係ないのですが、彼女たちならではもう一つの強みが「仲の良さ」だと思います。

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「Pinky Promise」の MVが10万回再生を突破したあと、スペシャル・エディットの公開を予告して新しいティザー映像がアップロードされました。そこから伝わってくる@onefiveの親密な距離感、その空気はMusic Video本編でも垣間見られるものですが、4人が過ごしてきた時間の長さ、共に経験してきたことの濃密さ、築き上げてきた信頼関係は間違いなく強みだと僕は思っています。それはスキルや容姿、知名度とは別の次元で、観ている人たちに「尊い」と感じさせることが出来るものだからです。仲の良い人たち、お互いがお互いを好きということが隠せずに溢れ出している人たちを見たら、僕はやっぱり幸せを感じてしまいます。無理に演出をする必要は勿論ないんですけど、オフの親密な空気を自然のまま見せる事は、見せ方次第で武器になるのでは、と思ったりもしているのです。…余談ですけどね。

 

さて、限られた活動を見て様々なことに考えを巡らせ、要らぬ心配をしてしまうのは僕が「父兄」である以上仕方がないことなのかな、とも思います。しかし、それでも僕なりに分かっているつもりでいるのですが、本当に重要なのはとにもかくにも@onefiveが動き出した、ということです。動き出したということは、続く可能性があるという事です。そして、動き出したということは、彼女たちがそういう「選択」をした、という事です。これは極めて重要で、もしかするとそれが現時点での全てである、と言い切ってしまっても良いことかも知れません。さくら学院はこれまで本当にたくさんの素晴らしい表現者を輩出してきましたが、卒業生がその後もパーマネントに活動を共にしているのは、BABYMETALだけです。在籍期間中に様々な事を学び、成長する多感な少女たち。さくら学院卒業の時点での未来への「夢」が同級生の4人で揃うことは、きっと、それだけでも奇跡的なことなのだと思うのです。

 

彼女たちはまだ15歳で、無限の選択肢があります。きっと彼女たちもそれを知っています。未来なんて誰にも分からないのですが、少なくとも今の時点では、4人は「一緒に夢をつかみたい」と望み、約束してくれた。そのことに僕はただただありがとうございますとしか言えないし、僕たちが学院祭のアンコールで観た@onefiveのステージは、もう一つの奇跡の始まりになるのかも知れない。可能性はゼロじゃないよね?…などと自分で自分に問いかけながら、今日も「Pinky Promise」のプレイボタンを押しています。

 

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◇「Pinky Promise」配信一覧

Pinky Promise

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さくら学院 Summer LIVE 2019 ~夏のミュージックアワー~

 

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2019年の夏はとても楽しくてたくさんの感動を得た夏でした。それはもちろん、初夏のBABYMETALのライブから既に始まっていたのですが、特に8月の1ヶ月間は不惑を過ぎた僕が恥ずかしげも無く「人生最高の夏」と叫ぶのをためらわないほどの楽しさで、これまでの僕の人生に大きな影響を及ぼしていたフジ・ロック・フェスティバルに通っていた時期を凌駕するような素晴らしい体験となったのでした。

 

84日に初めて参加したTIF11日、横浜でのさくら学院公開授業「一五一会の授業」。17日、渋谷duoでの山出愛子さんのライブ。(その裏では幕張でのSummer SonicBABYMETALがライブをしていました)そして、夏のイベントの締めくくりとなった824日、マイナビBLITZ赤坂での「さくら学院 Summer LIVE 2019 ~夏のミュージックアワー~」。昼公演と夜公演に参加させてもらったこのライブの感想を簡単ではありますが書いてみたいと思います。

 

 

◆昼公演

再開以前の旧赤坂BLITZ時代からよく足を運んだマイナビBLITZ赤坂は、近年のさくら学院にとっては主にバレンタイン公演などで馴染みの深いライブハウスです。8月24日お昼前、前日までの涼しい気候から一転して歩くだけで汗だくになるような陽射しと暑さのなか赤坂へ。昼公演は800番台後半のためフロアに入った時点で既に視界良好の場所はほとんど残っておらず、下手側最後方で開演を待ちます。会場内には夏を感じさせるJ-POPの楽曲。17日に愛子さんがライブで歌った曲も多く流れ気分が盛り上がっていたところに、ふと下手側2階の関係者席を見上げると、アミューズキッズと思しき数人の女の子がスタッフさんと共に座っていました。僕がじっと見ていると、柵に手をかけてフロアを見て…ほとんど睥睨するようにこちらを見ている子と目が合いまして、瞬間そうかな?と思ったのですが、後にやはりCiao Smilesの大島美優さんだったと判りました。自分の中でここ1カ月ほど急激に注目度が増している美優さんを直に見ることができたのは幸運なことでした。

 

昼公演の「影ナレ」は八木美樹さん。そして、定時を少し過ぎた頃に有友緒心さん・吉田爽葉香さん購買部の2人がまずステージに登場します。ジュークボックスを模したステッカーからデュークウォークに繋げる流れはさすがに安定の笑いのクオリティで、ポスターカレンダーの紹介に身長測定を絡め、(爽葉香さんと田中美空さんの最長身争いがどうなったかは)この曲でチェックしてや~!と、「負けるな!青春 ヒザコゾウ」のイントロがスタート。振り入れ時のままの並びで、つまり爽葉香さんが転入式に続いてもう一度「集合!!」を叫んで、サマーライブは成長痛を描く爽やかなパフォーマンスで幕を開けたのでした。

 

全員が横一列に綺麗に並ぶエンディングから、続いては「Hana*Hana」。2017年度学院祭以来のパフォーマンスとなるでしょうか?今年度この曲が披露されるならラップパートには戸高美湖さんが抜擢されるのでは、と思っていたのですが、なんとステージ前方に躍り出たのは "ありともり" の2人!緒心さんと森萌々穂さんが楽しそうに踊ってラップしお尻をぶつけ合うのはビジュアル的にもとても華やかです。2曲が終わった後の自己紹介を併せたMCでも触れられたように、2013年度以来となる夏の単独ライブのオープニングに2013年度の楽曲というさくら学院らしいセットリストのチョイスでした。

 

トークは全体を通して自由度が高いように見えましたが、実は綿密な準備とアドリブの大胆な組み合わせなのではないか…と思わせる部分もあり、面白かったです。このあたり、萌々穂さんはかなり頭を使っていそう(実はそんな事も無いのかも知れませんが笑)。自己紹介時のお題決めを任された藤平華乃さんが即興で出したお題は「夏にちなんで、好きな髪飾り」で、自分自身ではしっかりとオチを付けようとしていました。MCの後は「Hello IVY」、「チャイム」、「ベリシュビッッ」と今年度すでに披露済みの楽曲がパフォーマンスされ、一回ごとに完成度が高くなって来ているのが確認できました。

 

「暑いので水分を摂りましょう!父兄さんも!」と、給水タイムから再び全員でのMC。公開授業の話題が出て、更に練習をした一五一会の演奏をしたい、と言う華乃さん。爽葉香さん・緒心さん・萌々穂さんが一五一会を演奏し、フロアの父兄さんたちが合いの手を入れて完成させる「島人ぬ宝」(BEGIN)が披露されました。特筆すべきは野中ここなさんのイントロデュースから登場した2匹のシーサーこと野崎結愛さんと木村咲愛さんの可愛さ。下手後方なので対角線上の結愛さんが自ずと目に入るのですが、「スイッ スイッ」のパートの動きはもう言語化が困難なほどの可愛さです。父兄さんと一緒に楽しみたい、という生徒のみんなの気持ちに包まれたパフォーマンスでした。

 

続いてここも「キラメキの雫」、「FRIENDS」、「message」と今年度既に披露済みの楽曲。「キラメキの雫」はTIFからの3週間で積み重ねたものを感じさせ、「FRIENDS」ではオープニングで照明のトラブルがあったものの、落ち着いてパフォーマンスを続ける12人。仲さん(中等部3年の4人)のソロにどうしたってウェットな感情を刺激される「message」も、フラッグの海と相まって忘れられない光景を作り出しました。後日、配信番組で華乃さんがこのシーンに言及したこと、森先生の「知らないうちにラスト(の披露)かも知れない」という言葉。さくら学院のライブは観ている側も "一瞬一瞬" を大切にしなければいけないのだ、と改めて思い知らされます。

 

アンコールでは、ラジオDJのSEと共に上手・下手の袖から結愛さんと咲愛さん(遠くてはっきり分からなかったのですが、この2人でしたよね…?)が飛び出してきて、 「ミュージック・アワー」がスタート。夏らしい軽快だけどちょっぴり切ないメロディ、ポルノグラフィティ独特の "暑苦しさ" がさくら学院によってこんなにもキュートになるとは。「変な踊り」でフロアも一体となって盛り上がります。そして昼公演のラストはTIFで披露されてそのパフォーマンスに2014年度卒業生の4人を投影した父兄さんも多かったであろう「君に届け」でした。全体の歌のクオリティーがTIFよりも更に上がり、個人的には爽葉香さんが歌う「夕空 オレンジの…」のパートで今回も目頭が熱くなります…。この昼公演では、カバーを除けば初披露のパフォーマンスは冒頭の2曲だけで、サマーライブは今年度前半の核となる楽曲群の完成度を高め、確固たるものにする地盤固めのライブなのかな、と感じていました。

…この時までは。

 

◆夜公演

しばし休憩を取ったのち、陽が傾き始めた頃に再びBLITZへ。夜公演では500番台の整理番号。フロアに入ると自分よりも早い番号でも一段上がった視界の良い場所を確保する人も多く、再び下手側で今度は真ん中より少し前くらいの場所に立つことができました。開演前にセンターの2階席を見上げると、さくら学院のライブでは度々そのお姿を拝見している野崎珠愛さんが柵に手をかけてフロアを眺めています。自分も含めてフロアの何人かの父兄さんが手を振ると振り返してくれる珠愛さん。お姉さん同様、彼女も人に注目されるという星の下に生まれついた人なのだな、と思ったりします。

 

夜公演の "影ナレ" は購買部の2人。ちょっとしたコント仕立てで生影ナレを進めて行きますが、父兄さんのリアクションに対してしっかり反応する余裕も。いつものように「Kiss Me Again」からチャイムの音が鳴り、ライブがスタートします。一曲目、さくら学院のバックドロップにビジュアルエフェクトが映し出され、プロペラ音のイントロと共に白い公式Tシャツ姿の12人が颯爽と舞台に現れます。2018年度の卒業式でも印象的なパフォーマンスだった「FLY AWAY」。この曲は生徒のみんなも言っていますが、観ている側の気持ちも思いっきり高揚するオープニングの一曲ですね。ダンスを通してフロアにびしびしと伝わるステージ上の気迫。美しいフォーメーションとタイミングも角度もぴったり揃う腕の振り。そしてクール・ストラッティンなウォーキングから凛々しく決めるラストのポージング。センターの萌々穂さんの横顔は不敵なほどにカッコよく、トラックがぶっつりと終わる瞬間、怒号のような歓声にフロアは包まれました。

 

間髪入れずに、2曲目は「オトメゴコロ。」。短いソロが多く、名前をコールできる事もあってライブでは鉄板の盛り上がりを見せる楽曲です。サビの部分で上手・下手の端にそれぞれ位置する白鳥沙南さんとここなさんの迫力が凄まじく、この2人は他の楽曲でもセンターで目立つ場面が多い訳ではなかったのですが、今のさくら学院に安定感と重量感をもたらす要のような存在だと感じました。中等部2年はそういう役どころなのですよね…。2曲が終わってのMCで昼公演に続いてお題付きの自己紹介がおこなわれるのですが、この時点でもう爽葉香さんの前髪はべったりとおでこにはりつき、首筋は汗でキラキラと光っていました。他の生徒も汗だくになっている人が多く、オープニングからパフォーマンスが全力に振り切るものであったことがよく分かります。

 

夜公演のお題は「夏にちなんで 好きなTシャツの色」。僕も(森先生と同じく)思わず、色かよ!12色も出ねえよ!!とツッコんでしまいましたが、3番目か4番目に沙南さんがいきなり「好きな柄は~」と縛りをぶち壊そうとしたのが痛快でした。そして昼夜通じてハムスターという天丼をしっかりと活用した結愛さんもさすがです。MCに続いては「チャイム」~「School days」というTIFでも演じた並びの2曲。この2曲では佐藤愛桜さんがとてもいきいきと楽しそうにパフォーマンスしていたのが印象的でした。生来の真面目さとストイックさがパフォーマンスから滲み出て感じられる愛桜さんですが、それでいて現段階でもステージ前方に出てくればしっかりとフロアを見てレスポンスをしています。咲愛さんもほとんど視線を落とすことはなく、ダンスも小さな身体で弾けるように踊って先輩達に付いて行ってたし、美湖さんは早くもエースの雰囲気を出し始め、今年度の転入生のポテンシャルがこの夏の一回ごとのパフォーマンスで明らかになったように思いました。

 

 続いては昼公演でも演じた「Hana*Hana」。僕にはトラックが刷新されていたように聴こえましたが、どうだったでしょうか?18年度に比べて12人のユニゾンで歌う時に若干幼くなった印象のボーカルがこの曲にはぴったり合っていたと思います。そしてトラックでもドリーミィなシンセと歪んだギターの対比が面白いのですが、指先までひらひらさせるキュートな振り付けをバッキバキに踊る華乃さんが否が応でも目に飛び込んで来るダンス。可愛いと激しいを併せ持つこの曲の魅力を余すところなく表現していました。再びトークを挟み、ここで夜公演の一五一会の演奏が入ります。昼公演よりもかなり近くで観ることができ、シーサーの可愛さもよりダイレクトに。爽葉香さんは演奏しながらしっかりと歌も口ずさんでいました。それから、スイッ スイッの時に美空さんが手の振りを入れていたのですが、すごくリズム感良かったですよね?昼公演に続いて本当に思い出に残る時間となりました。

 

夜公演本編の終盤。今年度ここまでのさくら学院のパフォーマンスを代表する楽曲とも言える「キラメキの雫」、「FRIENDS」が演じられましたが、この時はまさに振り返り映像の中で華乃さんと緒心さんが語った通り、観てる僕も「あと何回観られるんだろう…」という気持ちが強く、特に「FRIENDS」で "そよかの" ペアが下手に来た時には早くも半年後を想像して感極まってしまう有様でした。そして本編のラスト。スタートの立ち位置の時点でまさか?と思い、萌々穂さんが曲振りで「先輩達から受け継いできたものを、次の世代に "運んで" 行きたいです」と言った瞬間に鳥肌が立った、「Carry on」。このライブにおける最大のチャレンジであったであろう一曲が、時計の針の音とウクレレの音色に導かれて静かに始まりました。

 

さくら学院の歴史の中でも「歌」の力が強かった2018年度。その18年度を代表する楽曲である「Carry on」を演じるには、相応に「歌」の実力が伴わなければならないし、ゆったりしたテンポで情感を込めて踊りながらあの繊細な歌を聴かせるのは更に難しいはず。チャレンジだけでも賞賛に値すると思うのですが、この日観た2019年度の「Carry on」はこの時期としては完璧と言っていい出来栄えだと僕は思ったし、その12人の「歌」が届けてくれた感動は、今思い出しても涙が出てくるほどに鮮烈でした。18年度と異なり絶対的な歌の中心がいないハンデは、複数の実力派ソリストが多彩な歌を聴かせる今年度の個性の色へと昇華されていました。ストレートな歌声が心に突き刺さる緒心さん。物憂げでくぐもったような声に虜になりそうな萌々穂さん。中音域が伸び声量が豊かで迫力ある美樹さん。独特のコブシの利かせ方がソウルフルな美湖さん。元々持っているハスキーな声質に、麻生真彩さんの背中を追いかけるような情感を垣間見せた華乃さん。そして、爽葉香さんが、あんなにも「強さ」を感じさせる歌を唄うなんて…。8月18日のちゃおサマーフェスティバルでのゲストライブは観ていませんが、TIFと比較すると明らかにこの日、歌のレベルは格段に上がっていました。個としても、チームとしても。

 

さくら学院は、伝統を受け継ぐと同時に前年度以前の「自分たち」と比較される宿命にあるグループです。2018年9月の放課後アンソロジー、アンコールの「My Road」がぐしゃぐしゃでありながらも限りなくエモーショナルだったのは、自らの内なるものと闘っている状態でも、大きかった先輩たちの存在をなんとか乗り越えようとした「覚悟」が一つ一つの声、仕草にこもっていたからだと思うし、この日の「Carry on」も意味合いは違えど、パフォーマンスがその時、その場所、自分たちだけで完結していないというさくら学院の本質をはっきりと自覚したもののように思えました。そして昼公演の後に感じていた地盤固めのライブというイメージは、完全に覆されました。

 

昼公演よりも時間がかかったアンコール明け、アロハ姿になって再びステージに躍り出て「ミュージック・アワー」、そして何度観てもやっぱりため息が出る美しさの「夢に向かって」をパフォーマンスして、晩夏の暑い一日を一気に駆け抜けた12人はステージを去って行きました。後に残ったのは感動と充実感、多幸感と、少しの寂しさです。さくら学院のライブは本当にいつも素晴らしいけれど、常に一つの "ピリオド" を想起してしまう。ただその時を楽しめばいいのに、しょぼくれたおじさんはいつもそんな事を考えてしまうのです。でもね、これだけは自信を持って言えます。さくら学院のみんなを追いかけた2019年の夏は、間違いなく人生最高の夏だったよ。10月の学院祭で更に進化したパフォーマンスを観られるのを楽しみにしたいと思います。

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(写真引用:さくら学院職員室Twitter)

さくら学院 職員室 on Twitter: "本日『さくら学院 Summer LIVE 2019 ~夏のミュージック・アワー~』にお越しいただいた皆様、ありがとうございました!楽しんでいただけましたか?☺️夏の思い出の1ページになっていたら嬉しいです✨… "

 

さくら学院 Summer LIVE 2019 ~夏のミュージック・アワー~ 

(2019年8月24日 マイナビBLITZ赤坂)

 

【セットリスト】

昼公演:

1.負けるな! 青春ヒザコゾウ

2.Hana*Hana

3.Hello IVY

4.チャイム

5.ベリシュビッッ

6.島人ぬ宝(BEGIN)

*有友・森・吉田による一五一会の演奏

7.キラメキの雫

8.FRIENDS

9.message

-encore-

10.ミュージック・アワー(ポルノグラフィティ)

11.君に届け

 

夜公演:

1.FLY AWAY

2.オトメゴコロ。

3.チャイム

4.School days

5.Hana*Hana

6.島人ぬ宝(BEGIN)

*有友・森・吉田による一五一会の演奏

7.キラメキの雫

8.FRIENDS

9.Carry on

‐encore-

10.ミュージック・アワー(ポルノグラフィティ)

11.夢に向かって

 

https://twitter.com/sakura_shokuin/status/11652533532715https://twitter.com/sakura_shokuin/status/1165253353271513088

風とタバコと彼女たち ~映画『さよならくちびる』を観て~

さくら学院を卒業した新谷ゆづみさんと日髙麻鈴さんが出演する映画『さよならくちびる』を、公開初日の5月31日に鑑賞しました。2人が映画に出ると知ってから、その演技力の確かさをよく知っていた事もあり待ち切れない思いで数か月の日々を過ごしてきましたが、その期待を上回る素晴らしい演技と、映画自体がとても素敵な作品だったので、非常にざっくりとではありますが感想を書いてみることにしました。内容のネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。また、ただでさえ拙い文章力で、書きなれていない映画の事を書きますので、的外れの数々はどうかご容赦ください。

 

gaga.ne.jp

(映画公式サイト)

 

『さよならくちびる』は『害虫』や『黄泉がえり』などを手掛けた塩田明彦氏が原案/監督を務め、主題歌に秦基博さん、挿入歌にあいみょんさんという豪華なミュージシャンが参加した音楽ロードムービーです。主役であるアコースティックデュオ=ハルレオを演じるのは門脇麦さんと小松菜奈さん。2人が実際にギターを弾き歌を唄うライブシーンも大きな話題となりました。3人目の主役とも言えるローディー役に成田凌さん。出演する役者さんは少ないものの、新谷さん日髙さんはポスターでもかなり目立つ場所に名前が載っていて、映画初出演にしては大きな扱いであったことが父兄さんの期待を高めていたと思います。

 

解散を決意したハルレオの2人=ハルとレオと付き人のシマは、東京を出発して7つの街を回る最後のツアーに出ます。旅の車中の様子、各都市でのライブ、そしてハルとレオの出会いからシマとの出会いを経て、それぞれが「抱えるもの」を理由に3人の心がすれ違っていく過程。映画は淡々としたロードムービーであり、過去の回想が入り混じって独特のリズムと空気感を産み出す個性的な作品でした。実力派ミュージシャン2人が提供した楽曲はどれも素晴らしく、特に主題歌の「さよならくちびる」はふと気付くと口ずさんでいるほどすんなりと心に馴染む佳曲です。門脇さんと小松さんの演奏シーンは自然でたどたどしさは一切なく、透明感とけだるさを併せ持つ不思議な魅力のハルレオはまるでそこにいるような存在感を持ってスクリーンの中で歌っていました。

 

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素晴らしく丁寧でエモーショナルなライブの場面と、3人の心の機微を描き出す旅の風景を中心に物語は進みます。そこにタバコ、カレーライス、アナログレコードといった小道具。そして同じく全編を通して強い印象を残した風、風で騒めく木々。そして太陽の光と暗闇に浮かぶライブハウスの対比などがとても印象的にフィーチュアされていました。それらは物語の主役3人の心の動きを表すメタファーのようであり、饒舌な説明を排し映像でそれを提示することで受け手に様々なことを想像させる芯の通った映画的手法に、観ている僕は惹きこまれました。

 

新谷さんと日髙さんはちょっとびっくりするくらいの輝きを持ってスクリーンに現れます。セリフはほとんどありませんが、登場する3つのシーンでの表情、交わす視線、しぐさ。そして口ずさむ歌を通してハルレオへの、或いはお互いのお互いに対する想いを見事に表現し、映画に彩を加えています。2人の役柄は物語の進行に直接関係している訳ではありません。しかしながら、「画」と「音」を主として流れていく物語を邪魔することなく、しかも “流れ” からは独立した輝きを魅せたのは大きなインパクトだったのではないかと思います。もちろん僕は彼女たちに特別な思い入れを持っているので、冷静に見る事は難しいのですが…従前からのファンであるという目線を除いても、2人は作品に一つのアクセントを加える存在として観た人たちの記憶に残ったのではないでしょうか。f:id:poka-raposa:20190602205331j:plain

(写真引用:モデルプレス)

元さくら学院・新谷ゆづみ「さよならくちびる」で映画初出演、女優の道へ 目標は二階堂ふみ「かっこいい女性になりたい」<インタビュー> - モデルプレス

 

時に浮き沈みしながら、さざ波のようなリズムを保ったまま終盤まで流れてゆく物語。そしてラスト近く、それまでは味気の無い高速道路の標識や閑散としたシャッター商店街、異世界への入り口のようなライブハウスの階段だった風景が、歴史を纏ったレンガ作りのホールと、空撮された函館の夜景に変わります。この函館のビジュアルと金森ホールでのライブシーンが、映画のクライマックスです。新谷さんと日髙さんの2人はこの函館の風景に美しく溶け込んでいて、本当に、映画の一部にしっかりとなっていました。それがとても感動的でした。

 

この映画は表面的にはハル、レオ、シマ3人の“恋愛”に対する視点があるのですが、それはいつしか3人とも「自分は何者で、どう生きていくのか」という問いの答えを探し続けている、ということに置き換えられていきます。レオが「わたしは何の為に音楽をやっているのか」とぶちまけるシーン。僕はその答えとして意図的に用意されたのが金森ホールのライブで、意図せずその答えとなったのが日髙さんのアドリブのシーンだったのではないかと思いました。そして映画のラストは、彼らの若さと関係性を考えれば「答えを出した」のではなく「答えを先延ばしにした」のだと思います。彼らの未来は限定されず、3人の物語とともに、あの2人の少女の物語も続いていくのでしょう。

 

新谷さんと日髙さんの演技はもちろん、映画全体に繰り返し観たくなるような様々なものが隠されていそうな『さよならくちびる』。必ずまた観てみたいと思いますし、その時にはまた違ったことを感じるのを楽しみにしています。 

いくつかの随想③ ~さくら学院の「役職」についての雑感~

 

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さくら学院の役職について、知らない人に説明をしようとする時、歴の長い父兄さんたちはどのような言葉を用いるでしょうか。僕は少し前、職場の後輩にさくら学院のことを語る機会があり生徒会人事についても短く触れましたが、恐らく彼は「ああ、そういう役割を決めるんだ。そんな部分でもリアルな学校を模しているんだな」くらいにしか捉えなかったかも知れません。もちろんそれはシンプルに的を得ているのですが、さくら学院における役職がグループ内の役割分担に留まらず、彼女たちにとって成長に影響する重要な要素であること、そして役職が基となって創り出されるドラマをこの目で見て知っていると、一言でその本質を説明するのはなかなか難しいという気がします。

 

2018年度の転入式では生徒総会における役職発表で大きなサプライズがありました。約束された人事などないことはよく分かっていたはずなのですが、倉本美津留校長が「トーク委員長… 麻生真彩」と言った時の驚きは、配信の画面を見つめながら思わず「マジかよ!」と叫んでしまう衝撃がありました。中等部3年の新谷ゆづみさん(生徒会長)、麻生真彩さん(トーク委員長)、日髙麻鈴さん(はみだせ!委員長)に与えられた役職と結果した3人の心の動きは、2018年度のさくら学院に幾つものドラマをもたらしたと思います。

 

さて、201956日に文京シビックホールでおこなわれた『さくら学院 2019年度 〜転入式〜』で、僕は初めて現場で実際に転入式を体験する事ができました。そして3人の卒業生を送り出し9人体制となったさくら学院、新たに3人の転入生を迎え入れた2019年度の新生さくら学院のパフォーマンスを経て、やはりこの日もクライマックスだったのは生徒総会での役職発表でした。

 (*以下、写真は「音楽ナタリー」様のレポートよりお借りしています)

 

12人の生徒、森ハヤシ先生に続いてステージに倉本美津留校長が登場し、生徒総会がおこなわれました。役職発表でまず名前を呼ばれたのは「トーク委員長」に任命された森萌々穂さん。続いて有友緒心さんが「はみ出せ!委員長」に。吉田爽葉香さんが「顔笑れ!!委員長」に任命され、「次で最後です」「ええ!? マジですか・・・」という校長と森先生のやり取りの後、さくら学院の「9代目生徒会長」に藤平華乃さんが選出されました。どの役職に任命されるか分からない状態でステージに立つ生徒たちが、短い時間で頭と心を整理し大勢の観客の前で就任を受けたスピーチをする生徒総会のこの時間は、ライブパフォーマンスにも劣らず研ぎ澄まされた「表現」の時間でもあります。

 

この日、最初にスピーチの為にマイクを持ったのは萌々穂さんでした。彼女は左隣の爽葉香さんに「6?ろく??」と声に出さずに確認してから話し始めますが、すぐに「校長先生、なんで萌々穂はトーク委員長なんですか?」と、挨拶を止めて任命の理由を倉本校長に問いただします。校長の最初のリアクションは「自分で考えなさい」でした。この反応は無理もないことだとは思うのですが、萌々穂さんは納得しません。「萌々穂は、プロデュース委員長がやりたかったんです」。ついに観客席に背中を向け、ここから誰もが予想もしなかった萌々穂さんと校長の本気のぶつかり合いが始まるのです。

 

倉本校長から自らが納得できる言葉を聞き出すため、或いは流れ落ちる涙を父兄さんに見られたくなかったこともあったのか、ダンスのフォーメーションを除けばおよそ有り得ない、萌々穂さんが父兄さんに背中を向けたままの状態で、舞台上では真剣なやり取りが続きました。その間およそ5分はあったでしょうか。最終的には校長と森先生から「役職がなくともプロデュース委員長に相応しい働きをしていけば、改めて任命される可能性だってある」という言質を取り、ようやく萌々穂さんはスピーチを再開したのでした。

 

この場面で僕が強く感じたのは萌々穂さんの意志の強さはもちろん、「舞台人としての強さ」でした。彼女はよく “プロ” と呼ばれますが、僕はスキルの部分だけではなく、舞台の上にいる自分を俯瞰で見ることが出来る視点に、彼女のプロフェッショナリズムを感じます。萌々穂さんは、自分は感情的になっていたというニュアンスを後の「FRESHマンデー」で語っていましたが、恐らく彼女はあの場で、舞台上で、ライブビューイングも決定していた公演の最中にあの行動を取ることがどういう「効果」をもたらすか、しっかりと理解していたと思います。さくら学院に転入して以来、数えきれないほど舞台上で真剣勝負をしてきた彼女の気迫とオーラに、さすがの倉本校長もたじろいだ…僕にはあの場面はそんな風に見えました。f:id:poka-raposa:20190526131337j:plain

納得しきれない中でスピーチを終えた萌々穂さんに続き、爽葉香さんがマイクを取ります。爽葉香さんは涙を流す萌々穂さんに(去年、真彩さんにしたように)タオルを渡し、萌々穂さんをなだめ、そして自分の挨拶は少しやりづらそうにしているように見えました。もし、萌々穂さんがすんなりと役職を受け入れ、“波風” を立てなかったとしたら、爽葉香さんは違うことを言っていたかも知れない…と僕は思ったりもします。それでも、地方から通うメンバーを気遣い、下級生には「勇気を与える」、生徒会のメンバーには「支える」という言葉を使って自らの役目を語ったスピーチ。今年度も立派な振る舞いだったと思います。そして、爽葉香さんの凄いところはその後極めて短い時間で自分なりに役職の意味を咀嚼し、すぐに行動に移したところでした。生徒会4人の中で真っ先に日誌を更新し、彼女の誇りの一つでもある日誌の上で、顔笑れ!!委員長と自主的に兼任を決めた教育委員長としての役割を父兄さん達に報告することを宣言したのです。

 

続いて、同じく想定外の役職に戸惑いを見せていた緒心さん。この時には「わたしはちくわを吹いて転入してきたけれど、今ははみ出し切れていない。もっとはみ出して行きたい」と挨拶をしましたが、その後の日誌では「他の人がイメージするわたしからはみ出る」という素晴らしい答えを出していました。このスピーチの後、数分前の萌々穂さんに被せて「なんではみ出せ委員長なんですか!?」と校長に迫ったのは、まさに彼女が求められている役割を演じた場面だったと思います。空気を読み、ユーモアと機転で行動して場を好転させる力は間違いなく緒心さんの才能ですが、はみだせ!委員長という役職に悩みながらも、期待されている「有友緒心像」からはみ出していこうと決意したことは、彼女の賢さと成長への意志を感じさせるものでした。

 

最後に9代目の生徒会長に任命された華乃さんが、所々つっかえながらも「キモチ」のこもった挨拶をしっかりと終え、2019年度生徒会のキックオフとなる生徒総会は終幕となりました。昨年度、今年度とリアルタイムで役職が決まる場面を観て感じたことがあります。一つは、FRESHマンデーで森先生が言っていた「役職を気にし過ぎる必要はない」という前提を持って職員室の先生たちも役職を決めているであろうということ。倉本校長と森先生が萌々穂さんを説得していた時に2人の口から共通して聞かれたのは、「トーク委員長だからと言ってプロデュースをしちゃいけない事は無い」ということでした。これは全くその通りだし、恐らく職員室もそう思っているはずで、大切なのは役職の名前ではなく任命された人が何を為すかということです。役職は、そこから外れる事を "してはいけない" という縛りでは決してない。昨年度と今年度の人事からは、職員室が役職の神聖化を意図的に壊そうとしていることすら感じられました。

 

一方で、生徒たちにとってはそれほど簡単な問題ではない、という事もとても良く分かるのです。8年という歴史の中で、尊敬する偉大な先輩たちが作り上げてきたさくら学院の役職は、現役の生徒たちにとっては憧れや尊敬の的であり、さくら学院生として過ごす中で唯一与えられると言っても良い「トロフィー」であると思います。現役メンバーが過去にとらわれずに個性を爆発させることと、受け継がれてきた伝統を守り更に次世代へバトンを繋ぐこと。さくら学院が挑み続けていることの難しさを顧みると、役職にまつわる割り切れない複雑な感情が理解できてくるような気がします。

 

僕は今年度の爽葉香さんと緒心さんの役職について、個人的になかなか腑に落ちない部分があったのですが、ある時にふと2人がこの役職を「さくら学院のスタンダード」にまで昇華できたらいいな、と思うようになりました。今年度の人事で「顔笑れ!!委員長」と「はみだせ!委員長」が意外だったのは、もともと自分の中では岡崎百々子さんと日髙麻鈴さんの為にバイネームで作られたというイメージが強かったからです。しかし、さくら学院の現在と未来、そして課外活動も含めたメンバーたちの現在と未来を考えた時、この2つの役職は毎年度必要になってくるのかも知れないと思い、それこそトーク委員長のようにスタンダード化させるというミッションは、爽葉香さんと緒心さんにとって挑戦に値するものなのではないか、と考えるようになったのです。勿論この考えはまるっきり間違っているのかも知れませんが、考えた事によって観ている側の僕も納得できるようになったのは事実です。

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 役職はあくまでも役職で、主役はそこで悩んだり転んだりしながら成長をする「人間」そのものである、と思い知らされる瞬間が、僕がさくら学院を追いかけ始めてからの短い期間でも何度もありました。実は13歳や14歳の少女が成長していく方向をコントロールすることが出来る、というのは大人の思い上がりであって、彼女たちがどう成長していくのか予想がつかないからこそさくら学院はこんなにも面白いのだ、と思うこともあります。自分自身がどんな変身をするか自分でも想像できない、と日誌に書いたのは八木美樹さんでしたね。結局、本当は役職は一つの "きっかけ" に過ぎないのだと思います。だけど、さくら学院のみんなが役職を心から大切にしているその真っ直ぐな気持ちをしっかりと受け止めたうえで、1人1人、「個」としての彼女たちを全力で応援するしかない。今年度も実直にそれをやって行こう、と心に決めた2019年5月なのでした。

さくら学院のこと。③ ~The Road To Graduation 2018 Final~

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その日、関東では桜が満開になりましたが、朝は身を切るような冷たい風が吹き花冷えという言葉がぴったりでした。2019年3月30日土曜日。神奈川県民ホール(大ホール)で、2018年度のさくら学院を締めくくるライブであり、中等部3年の麻生真彩さん、新谷ゆづみさん、日髙麻鈴さんがグループを卒業する「卒業式」でもある『The Road To Graduation 2018 Final ~さくら学院2018年度 卒業~』が行われました。僕は2017年度に引き続き2度目の卒業式参観となりました。 

 

 セットリスト 

1.目指せ!スーパーレディー ‐2018年度‐ 2.Hello! IVY 3.FLY AWAY 4.Fairly tale 5.C'est la vie(美術部 Art Performance Unit trico dolls) 6.スペシャル☆メドレー(帰宅部 sleepiece) 7.ピース de Check!(購買部)8.clover(中等部3年/新谷ゆづみ、麻生真彩、日髙麻鈴)

 

9.未完成シルエット 10.Jump Up~小さな勇気~ 11.My Graduation Toss 12.スリープワンダー 13.約束の未来 14.Carry on

 

~さくら学院 2018年度 卒業式~

15.旅立ちの日に 16.See you…

  

(*セットリストおよび写真は「音楽ナタリー」様より引用させて頂いています)

natalie.mu

 

◆継承

開演時間の17時少し前に真彩さんゆづみさん麻鈴さんによる公演の注意事項、通称“影ナレ”が入ります。卒業を目前にして様々な場所で息の合ったトークを聞かせてくれた3人。この日のナレーションは録音でしたが、「ちゅうさんずがお送りしまあ〜す!」というユルい3人の声に、肩に力が入り過ぎていた僕も少しリラックスすることができました。そして開演前SEのAlan Walker「Alone」(「離れても一緒にいる 私は独りじゃない」という歌詞が印象的)が終わるとお馴染みの「Kiss Me Again」からチャイムの音が鳴り響き、さくら学院2018年度最後のライブが始まりました。

 

1曲目は「目指せ!スーパーレディー ‐2018年度‐」。担任の森ハヤシ先生を進行役に、12人の生徒が自己紹介をするノベルティ的な色の強い曲です。この曲は単なる賑やかしではなく、12人全てで異なるアクション、激しく緻密な立ち位置移動やボックスの取り扱い、ポーズをとったまま静止しつつ歌パートを担う黒子的役割のメンバーなど、実はパフォーマンスとしてのレベルがかなり高い楽曲です。最も印象的だったのは、けん玉のアクションが入る八木美樹さんのパートでした。「真彩ちゃん、特技のけん玉、譲って!」という美樹さんに「いいよ!じゃあ最後に一緒にやろっか!」と返す真彩さん。この時ステージ上のモニタにはオリジナルの「じゃあ、今年も一緒にやろっか!」という歌詞が映し出されていて、恐らくこれは真彩さんのアドリブです。特技のけん玉を美樹さんに取られそうになり、柔らかく抵抗をしていたのに、卒業を目前にして気持ちいいほどシャキッとした「いいよ!」を返すのです。さくら学院生としてけん玉を見せるのはこれが最後になる真彩さんが、正式に美樹さんにけん玉芸を譲った瞬間。ライブ冒頭から心を打たれます。

 

続いて会場が桜色のフラッグに包まれた光景と、ラスト近くの藤平華乃さんの伸びやかなソロが印象的な「Hello! IVY」、メンバー全員による挨拶と短めのMCに続いて、美樹さんの流暢な曲振りから「FLY AWAY」へ。僕はこの曲で田中美空さんに目を奪われました。一階席の最後方近くに座っていましたが、彼女はパフォーマンスの大部分でフォーメーションの後方に位置していたにも関わらず、僕の居る場所まで十分に届く、肉眼ではっきりと判るほどダイナミックなダンスを魅せてくれました。腕を高く上げる部分で目立つ手足の長さ。激しく速く、でも関節は滑らかに動き、首を大きく振って長い黒髪が美しく舞い乱れていました。その姿はあの映像の中で観た、舞浜アンフィシアターで「FLY AWAY」を踊っていた小等部時代の吉田爽葉香さんにも重なりました。

 

モノクロームのエンディングから一瞬の暗転ののち、「Fairy tale」がスタート。出だしから会場全体でハンドクラップが起こります。「FLY AWAY」では美空さんだけでなくセンター前面に出る美樹さんと野崎結愛さんも素晴らしいダンスのキレを魅せてくれたし、この「Fairy tale」でも小等部6年の2人とそして白鳥沙南さん、野中ここなさん、結愛さんの転入生たちがとても楽しそうに踊っていたのが印象に残りました。序盤の4曲では上級生の安定感に支えられて弾けるように個性を発揮する中等部1年以下のメンバーが目立ち、彼女たちが新たなさくら学院を確かに継承していく姿が見えた気がします。そして「Fairy tale」のラストを彩るリフレインの部分。麻鈴さんの「最後のタオル回しです!ついてきてください!!」を号令に、会場を埋め尽くした父兄さん(さくら学院ファンの愛称)たちは一斉にタオルを回します。マイクを通した中3の煽り、特に麻鈴さんはほとんど叫ぶように呼び掛けていて、大きなホール全体をタオルの波が激しくうねり、飲み込んでいました。最後の数秒間で全員がタオルを置きすぐさま立ち位置に戻って美しくポーズを取るエンディング。瑞々しく、溌剌としたライブの序盤でした。

 

◆祝祭

1年間を振り返る「歩みの映像」が流される中で衣装替えと転換が終わり、ここからは部活動ユニットも登場する中盤です。まずは蓄音機から流れるようなスクラッチノイズの音に導かれて、「C'est la vie」のイントロがスタート。森萌々穂さんをリーダーに、ゆづみさん結愛さんの3人から成る美術部 trico dollsが登場します。この曲には印象的な詞のフレーズが幾つもありますが、例えば

 “ C'est la vie 恐れないで C'est la vie 違うことを 

 単純じゃない私たちの 強いコントラスト ”

という部分。人生はアートという楽曲のテーマと同時に、個性を尊重しそれを表現していくさくら学院での活動そのものを示しているようにも思えます。学院祭では間奏部分で3人がモニターに「t・d・l」の文字を描くヴィジュアルパフォーマンスがありました。この日は映像がゆづみさん真彩さん麻鈴さんの名前をデザインしたものに変わり、その間にゆづみさんがステージセットの裏に下がって桜色の花のブローチを持って現れ、それをみんなの胸に着けるという凝った演出になっていました。のちにこれは萌々穂さんが自ら考えたという事が明かされていましたが、ゆづみさんへの気持ちが出発点となったこの演出は、彼女のプロデュース能力と秘めた熱い想いが形になった場面だったのかも知れません。

 

 もう一つ印象に残ったのは結愛さんのダンスが学院祭から更に進化していたこと。経験が少なく身体も小さい彼女が少人数のユニットに溶け込むのは、きっと想像以上に難しいことなんじゃないかと思うのです。しかしながら彼女はこの美術部のパフォーマンスで、先輩二人との経験差をカバーして余るがんばりを見せていました。そしてエンディングの場面では3人がイントロと同じく眠りにつくポーズをとるのですが、下手側の結愛さんはまるで本当に眠ったようにポーズをとり続けていて、萌々穂さんが “起こしに” 行くまで動きませんでした。きっと、それくらいパフォーマンスに集中していたのでしょう。ポーズを解いてセンターに戻った時、ゆづみさんがくすりと笑っていたのをよく覚えています。

 

trico dollsの3人が舞台から去ると、続いて部活動のイントロダクションの映像と音楽が流れます。会場はざわつき、そして『sleepiece』のロゴが映し出されると喜びと悲鳴が入り混じったような大歓声が。セットのバルコニー部分にパジャマ姿の3人。ピンクは真彩さん。黄色は華乃さん。そして緑はなんと麻鈴さんです。“卒業式スペシャル” の帰宅部 sleepieceのパフォーマンスは、「スイミン不足」でスタートしました。身体の小さい女性とはいえバルコニー型のステージは3人が立って踊るにはいささか小さく、柵も設置されておらず怖いと思うのですが、身体能力抜群の3人は軽やかにして表情豊かに踊ります。そしてショートバージョンの「スイミン不足」のエンディング、麻鈴さんの「もう一曲やるよ!!」の声と共に3人がメインステージに駆け降りてきて、会場には「めだかの兄妹」のイントロが鳴り響いたのでした。

 

この日最大の祝祭感がこの瞬間にあったと言ってもいいでしょう。ブーストする低音にキック、キラキラのウワモノが飛び交うバックトラック。舞台では、パステルカラーのパジャマに身を包みパンダのルームシューズを履いた、僕が知る限り最高レベルの美少女3人が踊っています。2018年度さくら学院のパフォーマンスTOP3が歌う新録音の「めだかの兄妹」はヴォーカルのパワーも凄まじく、しかも一切の容赦なく、バキバキのダンスを見せつけるsleepieceの3人。破壊力があり過ぎて抵抗し難い真彩さんの「にゃんにゃ〜ん!!」という煽りに応え、怒号のようなレスポンスを返すホールの父兄さんたち。最後方から見渡すその光景はまさに非日常的で、卒業式という特別な時間における、間違いなく 「動」 のクライマックスだったと思います。

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(出典:音楽ナタリー)

 

興奮が冷めない中、続いては購買部が登場。爽葉香さんと有友緒心さんによるコンビは2016年から数えて4年目に入りました。お互いに「3ガールズ」のメンバーである2人が登場した瞬間から、その美しさに目を奪われますが、見惚れる間もなく作り込んだコント仕立ての商品紹介が始まります。2人だけで考えた台本を2人だけで披露する。想像以上にプレッシャーだと思うのですが、もはや手練れと言ってもよい滑らかさでトークを回す爽葉香さんと緒心さん。「ヘッドマーク・ピンバッチ」紹介でのやり取りは秀逸で、2人の掛け合いは絶妙なテンポで進みます。「色褪せないフォトセット」の紹介に絡めて卒業生に「今までありがと~!!」と全力で叫んだ後、「ピース de Check」をパフォーマンスして部活動ユニットのコーナーを締めくくりました。

 

部活動のパフォーマンスが終わると、舞台には卒業を迎えた3人が現れます。「せっかく3人でステージに立っているので、私たちの出会いについて話したいと思います」というゆづみさんの振りから、3人は自分たちのことを語り始めました。真彩さんと麻鈴さんは幼い頃から仲が良かったこと。ゆづみさんがさくら学院に入ってからも話す機会があまりなかったこと。中2の終わり頃に3人でご飯を食べに行ったこと。そこで踊りたい曲をノートいっぱいに書いたこと。それがいくつも実現して嬉しかったこと…

 

そして、真彩さんがあの転入式での出来事を持ち出し、「わたしとゆづがお互いに接しにくくなった時、麻鈴が居たからこそ仲良くできたし、3人の絆ができたと思う」と言ったのです。2018年度を語る時には避けて通れないこの話題を卒業公演の舞台上でユーモアをまじえて語り、しかも最終的には麻鈴さんに救われたという着地にする。2018年度を象徴するような場面だと僕は思いました。「clover」には “優しさだけじゃ繋がれなかった” という詞が登場します。他者への優しさに満ちていた3人は常にその優しさを保ちながら、お互いの気持ちを素直にぶつけられるようになって、本当の信頼を築けたのではないでしょうか。暖かい関係性はラジオでの語り、FRESHの生放送、そして3月26日の『放課後アンソロジー』でも、充実感溢れるリラックスした空気としてこちらに伝わってきました。

 

80年代〜90年代の空気を匂わせるサウンドと切なくも力強い歌詞が素晴らしい「clover」。3人だけで踊るダンスは、冬以降急速に深くなっていった彼女たちの信頼関係が顕わされたような距離感とアシンメトリーな振り付けが印象的で、ゆらゆらと情感が強調された手指の動きもあって「舞う」という表現が合っているような気がします。最初のサビでは、真彩さんとゆづみさんのヴォーカルが少し不安定になったように僕には聞こえました。ステージに近い席で観ていた中には、真彩さんがこのあたりから泣いていたのではないか、と言う人もいました。僕にははっきりそうと分からなかったのですが、特に真彩さんとゆづみさんが感情を昂らせているのは感じていました。

 

クローバーの葉を思わせる緑の照明の中で、3人がそれぞれの目指す未来を見据えるエンディング。そして溢れ出した想いがステージの上に満ちたまま、ライブは後半へと続いて行くのでした。

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(出典:音楽ナタリー)

 

 ◆完成

さくら学院を知ってまだ日が浅い僕でも、あの切ないピアノのインテルメッツォ、そしてオルゴールのイントロが特別なものである事はよく分かっています。さくら学院の素晴らしい楽曲群のなかでも指折りの名曲である「未完成シルエット」。この曲が卒業式のステージで披露される時間は常に特別な数分間であり、同時にこの12人で踊り歌う時間が、確かに残り少ないものになっている事を観ている側に気付かせるのです。「未完成シルエット」にはスポットが当たる印象的なソロが多く設定されています。この日のパフォーマンスでは、「じゃあまた明日」を緒心さん。「置いてかないで」を美樹さん。「いつもありがとう」を爽葉香さん。最後の「バイバイ」を真彩さんがそれぞれ歌い上げました。また、落ちサビに入る「一生…」を痛切に歌ったゆづみさんの声も、とても心に残りました。

 

卒業式のクライマックスでは毎年のようにさくら学院歴代の名曲群が続くのですが、2018年度のセットリストも過去に劣らず素晴らしいものでした。「未完成シルエット」に続いてパフォーマンスされたのは同じく2013年度の代表曲である「Jump Up ~小さな勇気~」。歌詞も旋律も美しく、それでいて実は非常に激しいダンスも伴うタフな楽曲です。特に2番のサビを全力で踊った後、カノンの旋律に導かれて始まる合唱パートは圧巻。呼吸を整える間も無いはずなのに、乱れることもなく凛として響く12人の「声」に打たれ、自然と涙が流れ落ちます。ミラーボールの光が星のように降り注ぎ、ステージだけでなくホール全体を包むようにも見えた照明の演出も感動的でした。

 

ここで昂った感情を少し落ち着かせるかのようにMCが入ります。真彩さんはトークになれば努めて明るく楽しげに振舞っているように見えました。ここまでのライブを振り返り、爽葉香さんの曲振りからこちらも卒業式の定番「My Graduation Toss」へ。全体を引っ張る真彩さんの力強さ。ブレスまで繊細に伝わる麻鈴さんのソロ。そして各々が個性を爆発させながら、チームとしての一体感も強かった2018年度の色が楽曲にとても合っていて、白眉のパフォーマンスでした。常に感動を呼ぶ「最後まで笑顔じゃなくてごめんね」のパートは華乃さん。真彩さんとの強い抱擁と思わず乱れた歌声も、2人の関係性を知っているからこそ、一層エモーショナルな場面となりました。 

 

空気を一変させて、次は2階建てのセットが映える「スリープワンダー」。おとぎ話の世界に迷い込んだ少女、ウサギや猫のアクションが振り付けに組み込まれお芝居の要素をたっぷりと含むパフォーマンスは単なる “楽曲” を超えたような奥行きのある表現世界をステージ上に描き出します。表情豊かにチシャ猫を演じる真彩さん。ゆづみさんの渾身の演技から始まる中盤のダイアローグ。数十秒間の台詞回しの後、結愛さんの「教えろー!」に重なる麻鈴さんの神々しいソロ。そしてラストでは中3がソロを繋ぐ場面があるのですが、ここで真彩さんが歌を飛ばすというハプニングが起きてしまいます。パフォーマンスが終わり、次の立ち位置に着く移動の時に、緒心さんが真彩さんに何か言葉をかけたように見えました。

 

続いてシンフォニックで力強いシンセのイントロから、「約束の未来」。9月のスタンディングライブで今年度初めて披露された時には、フロアを驚きと喜びで埋め尽くしました。直線が強調された振り付けが端正に揃うダンス、そしてフラッグ使いが美しいこの曲は、2018年度のパフォーマンスを代表する一曲だったようにも思います。そしてここで再び真彩さんのMCが入ります。「次で最後の曲です」と語り始め、簡潔でありながら心のこもった言葉で1年を振り返り関係する人々に感謝を捧げたこの曲振りは、まるで真彩さんからの短い答辞のようでした。「支えてくださった人たち、そしてわたしが大好きなメンバーのことを想って歌います」という言葉から、囁くように静かな声で「Carry on」という曲名が告げられました。

 

「Carry on」が持つ不思議な強さの正体は何だろう、と僕はこの曲を聴くたびにいつも思います。例えば「My Graduation Toss」は弾ける軽快な曲調とウェットな歌詞とのコントラストが印象的ですが、対照的に「Carry on」はサウダーデとも言うべき抒情的な曲調に対して、歌われるのは迷いながらも確かに未来へ歩を進めようとする強い意志です。「アイデンティティ」や「My Road」(同じくcAnON.さんの作品)でも描かれた綺麗ごとに終わらない彼女たちのリアルな心情、聴く者の深い部分を抉るような鋭さが、聴くたびに強く心に残るのです。そしてまた「Carry on」は、過去のさくら学院の名曲と比べてみても「歌」に重きを置いた楽曲であるように感じます。それぞれの個性を発揮したソロで中3から中2へと繋がれるテーマ。12人で唄う力強いサビ。中盤のブレイク前に入る萌々穂さんと緒心さんの鮮烈なソロ。そしてウクレレのインプロビゼーション後のゆづみさん、麻鈴さん、真彩さんの歌唱はまさに2018年度の「歌」の極点であり、そこからまた12人のユニゾンを経て、波立った水面が穏やかになる凪のようなエンディングを迎えます。月明かりを思わせる照明とスモークの演出による幻想的な雰囲気の中、この日も最後の残響が消えるまで父兄さんたちはステージの上の12人を固唾を飲んで見つめ、そして大きな大きな拍手が起きました。

 

卒業公演の後半部分は感情の昂ぶりも影響したのか、幾つかのミスやパフォーマンスが不安定になる瞬間も見られました。ステージ上においては徹底してプロフェッショナルである事を求められ、本人達もその境地に限りなく近づくことを常に目指すさくら学院のメンバーにとって、この日のパフォーマンスの出来は決して心から満足できるものではなかったかも知れません。しかし、規律と鍛練のすき間から感情がはみ出し、ほんの少しいびつな姿を形作る瞬間、観ている側の感動が予想を大きく超える体験になることもあります。僕は9月からずっと、2018年度のパフォーマンスの魅力の核は作り込んだ外郭からはみ出る人間臭さにあると感じていたし、その意味では、不安定で浮き沈みがあって、でもどうしようもなくソウルフルで感動的だったこの数十分間は、僕にとっては紛れも無く2018年度の「完成形」だったと思っています。f:id:poka-raposa:20190414212120j:plain

(出典:音楽ナタリー)
 

◆終幕

12人のメンバーが去り、舞台転換がおこなわれたステージでは「卒業証書授与式」が執り行われました。証書を受け取る卒業生たちの表情は、どんなにお金をかけてもテクノロジーが進化しても「造り出す」ことは出来ないと思わせるもので、この瞬間も紛れもなくライブの一部なのだと実感させられます。今年度、在校生代表として送辞を読んだのは藤平華乃さんでした。とにかく元気で末っ子感が強いと思っていた華乃さんも、15年度から数えて4年の在籍。冷静な俯瞰の視点を持ちつつ母性を感じさせる暖かいメッセージを卒業生へ送ります。転入以来の盟友である真彩さんへの言葉は、彼女自身が真彩さんの卒業を受け入れたくないという気持ちと、同時にミュージシャンとしての真彩さんの未来への大きな期待が綯交ぜになり、観ている者の心を打つものでした。

 

そして、いよいよ卒業生による答辞です。2018年度の生徒会長である新谷ゆづみさんがマイクの前に立ち、涼やかによく通る可憐な声で、答辞を読み上げ始めました。彼女は感情の機微を聴き手側に色鮮やかに伝える話し方ができます。何気ない事をただ言葉にするだけでも、センテンスの中で微妙に、繊細にトーンを変えることで彼女の想いがとても細やかに伝わるのです。これは確かに優れた「表現」だ、と僕は思いました。答辞の中で在校生一人一人への語りかける部分。今年度転入してきた3人。小等部を卒業する美樹さん。妹的な存在で特に親しかった美空さんへの「みく」。そして、次年度を担う中等部2年のメンバーへの声。彼女は全て微妙に声色を変え、そこに自身との関係性や様々な想いを全て込めたかのような声で語りかけていました。

 

僕の心に突き刺さったのは、萌々穂さんへの言葉です。

 

「いつも冷静で頼りがいのある萌々穂は、

 もっと…  人を頼っていいと思います。」

 

それは、厳しさと表現してもよい、強い声でした。しっかりしているから、と頼られ、本人も自覚していたからこそ、誰にも言えない孤独があったかも知れない萌々穂さん。2019年度に彼女自身とさくら学院が真の意味で成長する為に、本当に必要なものは何か。ゆづみさんは、たったこの一言でそれをはっきりと示したのではないでしょうか。僕はこの瞬間、ほとんど声を漏らすほど嗚咽していたと思います。厳しい、頬を叩くようなゆづみさんの言葉は、しかし、限りなく深い優しさに満ちていました。

 

読み終えた後に場の空気をいっぺんに柔らかくする “サプライズ” もあった素晴らしい答辞は、ゆづみさんの人柄そのもののようでした。続いて倉本美津留校長が式辞を。そして森ハヤシ先生からの言葉と式は続きます。担任として、「大人」として、そして時に観ているこちら側の気持ちも代弁してくれるような森先生の挨拶はいつも感動を呼びますが、今年も心に響く言葉に涙する人は多かったことでしょう。転入式での出来事とその後の彼女たちの振舞を見て「自分も一緒に傷ついてやらなきゃ」と思ったこと。そして人はいくつになっても成長できるのだから、みんなは卒業した後もさくら学院のメンバーなんだ、という言葉。森先生だからこそ言える素敵なメッセージだったと思います。

 

卒業式を終えて生徒たちが舞台袖に下がり、舞台上にはピアノが設置されました。椅子には昨年もピアノを弾いた吉田爽葉香さんが座り、「旅立ちの日に」の演奏がスタートします。美しいのはピアノの音色だけはでなく、短いその瞬間を惜しむように感じ取ろうとする表情、たゆたう指先、そしてピアノの演奏が終わりテーマ部の歌唱が始まるまで座って待っている時のピンと伸びた背筋。爽葉香さんの内面から溢れる美しさ、そしてさくら学院の美学が感じられる場面でした。「旅立ちの日に」と、そしてゆづみさんの「2018年度、ラストです!!」という叫びから始まった「See you…」の2曲。終幕が間近に迫っていることを実感する生徒たちは、感情の揺れを必死に抑えつつ最後の最後まで「表現」を続けます。必死に「表現」を続けながらも、残り少なくなった時間の中で交わされる視線。掌が合わさる音。震える声。どの年度でも、何度観ても、心を鷲掴みにされ揺さぶられるようなシーンが続きます。そして、2018年度の歌声は、最後まで力強かった。「See you…」を歌い終えた12人を見ながら、ぼうっとした頭でそんなことを考えていました。f:id:poka-raposa:20190418082550j:plain

 (出典:音楽ナタリー)

 

 ◆2018年度

卒業式を挟んで16曲を演じ切った12人がステージに横一列に並び、この日の締めくくりとして、在校生から卒業生へ。そして卒業生から在校生を含む全ての人たちへの言葉が贈られました。在校生からの言葉の後、初めにマイクを握ったのは日髙麻鈴さんでした。「最初はわたしです」と、4日前の放課後アンソロジーで進路発表をした時と同じ言葉。このウィットは間違いなく彼女のセンスです。4年間のさくら学院での時間で、何度も辞めようと思ったと告白した麻鈴さん。きっと彼女は自分の中で育てた音楽の、ダンスの、そして演技や絵画のイメージを上手くアウトプットできない時期もあったのではないでしょうか。麻鈴さんのような才能を誰もが持っている訳ではなく、容易く理解されないこともあったかも知れません。そしてそれが疎外感に繋がったことも…。その意味で2018年度にはみだせ!委員長という “居場所” を手に入れ、確たるものになりつつあった個性を更に爆発させ、大きく成長したのは彼女にとって幸せなことだったと思います。そして、その中でミュージカル女優という夢を見つけ、それに向けて歩み出した。これは、もしかすると日本の「芸能」にとっての大きな幸運となるかも知れない。大げさではなく、本当にそんな事を思ったりしています。

 

トーク委員長として、この1年間で表現者としても人間的にも飛躍的な成長を見せた麻生真彩さん。しかし、この最後の挨拶では感情が次から次へと溢れ出し、本人も言ったように「上手く話せない」ことがかえってリアルに感じられました。ほんとに、という言葉を何度も何度も繰り返すその姿は、まだまだ幼かった頃の彼女を思い出させるようなものでした。真彩さんはミュージシャンを目指します。その進路発表の時に彼女が語ったのは「(あるアーティストさんの言葉のように)観ている人に夢や希望を与えるだけではなく、観ている人たちの心を動かしてその人たちが誰かに夢や希望を与えられるような」アーティストになりたい、ということでした。僕は彼女もまた、さくら学院というアーティストに動かされて自らその道を目指しステージに立った人であり、間違いなくそのステージで、そしてステージ以外でも彼女自身の成長を通して、多くの人の心を動かしているアーティストだと思っています。もう既に目指すその場所の入り口に立っている、と言ってもいい。しかし真彩さんは勿論そんな事は思っていないし、どうやら彼女は自分自身に簡単には満足などしない人のようです。常に成長を望む真彩さんが、素晴らしいアーティストとして再び僕たちの前に現れる日はそう遠くはないでしょう。

 

 最後にマイクを取った新谷ゆづみさんは、涙で顔をくしゃくしゃにし、時にしゃくりあげるようにして言葉を紡ぎました。彼女がなかなか自分に自信を持てない性格であることは、公開授業や日誌、配信番組などからも伝わっていました。この最後の挨拶でもゆづみさんはさくら学院に転入してきた頃の自分を「歌もダンスも何もできず、自分に自信が無かった」と評していました。確かに、さくら学院での3年間で彼女が得たものは大きく、急速に成長したかも知れない。でも、3年前の彼女は本当に何も持っていなかったのでしょうか。僕は3年前の彼女をリアルタイムで見てはいないけれど、決してそうではなかったはずだと思っています。きっと、ゆづみさんには、見えない所で誰よりも努力できる辛抱強さがあった。努力を自分の為にだけでなくチームの為にできる献身性があった。「些細なこと」を豊かに色付けて自分のなかに吸収する感性があった。その些細なことからイメージを膨らませ、声で、視線で、細やかな動きで表現する力があった。表現をすることでそれを誰かに伝えたいという強い気持ちがあった。何よりも、些細な事や細かなこと、周りにいる人の気持ちや想いをヴィヴィッドに感じ取る「目」と「アンテナ」があった。それらは全て生徒会長として作り出してきた2018年度さくら学院の色に繋がっているし、女優・新谷ゆづみとしても大きな武器になるはずだと思うのです。ゆづみさんは持って生まれた才能とさくら学院で手に入れた経験を武器にして、表現者として更なる成長を見せてくれるに違いありません。

 

真彩さん、麻鈴さん、ゆづみさんがマイクを通さず彼女たち自身の声で会場へと叫んだ「ありがとうございました!!」という言葉で、この日の全てが終わりました。会場の外へと出ると、真っ暗な空からはいつの間にか冷たい雨が落ちていました。知己の父兄さんたちと語らい、僕は家路に着きました。家に帰り時計に目をやると、既に0時を回り日付は変わっていました。時間は続いてきて、続いてゆく。2019年度がスタートするまで、もう24時間を切っていました。

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